大航海時代

<大航海時代>第22篇●新しき勇者たちへ 第51話 日本を元気にするために

2002/09/30 16:18

週刊BCN 2002年09月30日vol.959掲載

高知工科大学 副学長 水野博之

 景気はどうもよくならない。政府は底を打ったと言うけれども、あれだけの整理をやったのだ。人を減らし、赤字を出した分だけは黒字になって当然で、それを回復というならば大借金をした人間が今年は借金をしないから立派にやっているというようなものだ。実際は昨年の借金で食いつないでいるのかもしれないのだ。

 日産のゴーン的革命が成り立つためには、これが持続し、本当のV字型にまでなるということが大切である。この点、本家本元の日産も本格的回復というにはなお、しばらくの時間を必要とする。ほかは推して知るべきであろう。果たせるかな、株価がまたおかしくなってきた。株価というのは不思議なもので、経済における最も有力な先行指標なのだ。これは別に証明された訳ではないが、実績がそのことを示している。

 この株価の動きを見ていると、景気の底打ち論が必ずしも正しくないことを示している。果たせるかな、証券会社あたりは、経済予測を次々に下方修正を始めている。これらを要するに、本当の日本の復活には既存の産業のリストラクチャリングだけでは駄目だということなのであろう。人を減らせば当然のことながら失業者が増え、購買力は落ちる。ひとつの企業はスリムになっても、全体としてみれば経済が強くなるはずはないのだ。少々の退職金をもらったって明日からのことを考えれば使う気にはならんだろう。

 こう考えてくれば、日本を本当に元気にするためには新しい仕事をつくり出さないと駄目であることがわかるだろう。この当たり前のことが行われていないから、株価は下がるのである。構造改革というのは首切りや事業縮小をやることではない。新しいビジネスをつくりあげることなのである。まさに起業そのものなのだ。若者たちよ。頑張って欲しいものだ。(土佐・坂本邸跡にて)
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