WORLD TREND WATCH

<WORLD TREND WATCH>第126回 MSのSMB新ライセンス

2002/10/21 16:04

週刊BCN 2002年10月21日vol.962掲載

 マイクロソフトのスティーブ・バルマーCEOは、これまでのウィンドウズでは年2ケタ成長は不可能になったと語り、02年7月新年度から世界的にSMB(中小企業)市場重点の戦略に転換した。このため、マイクロソフトは、これまで弱かったSMB向け業務アプリケーション拡充に注力している。

アプリケーション拡販へ

 同社が買収したソフト会社、米グレート・プレインズ、オランダのナビジョンが開発してきたアプリケーションを基盤にして、SMB向けの「MS-ERP」「MS-CRM」などを開発中だ。バルマーCEOは、世界のSMB向けネット関連業務アプリケーションは未開の処女市場で、同社が.NETサーバーと対にして売り込めば膨大な需要があると説明する。SMBの業務ソフトでシェアを一挙に高めるためには、そのプラットフォームとなる.NETサーバーがSMBに普及していることが条件となる。

 このためマイクロソフトは、ウィンドウズパソコンやSBS(スモール・ビジネス・サーバー)でも、中大企業に適用してきたライセンス制度EAs(エンタープライズアグリーメント)に類似した企業単位で契約すれば有利になる料金体制を発表する予定だ。新制度の骨子はSBSの場合、接続されるクライアント台数で決定される価格、そしてEAsでも採用されたサーバー・プロセッサ数に応じるプロセッサライセンス(PL)制も研究し始めている。

 同社はクライアント数が5台以下の小企業ではサーバーを介さずに、クライアント間でデータを交換する「ピアtoピア」が最適ソリューションと考え、このためのOS強化も推進中だ。これまで同社はSMB向けSBS複数バージョンを発表したが、いずれもその販売は世界市場でも同社の期待を裏切る結果となっている。しかし、SMB市場重点戦略を打ち出したため、マイクロソフトはSBS.NET版では失敗を許されない。SBS.NETユーザーベースそのものが、MS-ERP/CRMの顕在見込み客であるからだ。

 マイクロソフトのSBS.NETを大量に販売するためのライセンス制はユーザーよりも、これを扱う中小システムインテグレータ(SIer)が売り込み易い料金体系であることが重要だと同社は認識している。OSライセンス料やクライアント増設による価格アップをできるだけ抑え、SIerのERP、CRMカスタマイズで付加価値の大きいビジネスが行えるよう配慮する。マイクロソフトは、SMBでは(1)クライアント数2-25台、(2)26-50台の2ライセンス制を設定する考えだ。

 クライアント50台以上のマルチサーバーでは、サーバー台数に応じる料金やPLも検討中だ。SIerの意見を集約してライセンス体系を決定したいと同社は語り、SIerのヒアリングも開始した。新ライセンス制はSBS.NET(開発コード、Bobcat)発売と同時に発表される。マイクロソフトは割安感の強いSBSライセンス制導入で、インテルLinuxサーバーのSMBへの普及を阻止したい意向も露わにしている。(中野英嗣●文)

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