e-Japan最前線

<e-Japan最前線>16.三重県のサイバーウェイブジャパン

2002/10/21 16:18

週刊BCN 2002年10月21日vol.962掲載

 地方自治体がe-Japan戦略を推進していく実働部隊として従来の第3セクター方式ではなく、純粋な民間会社を設立する事例が増えている。岐阜県が地域IX事業を展開するために設立した運営会社「ジーシーアイエックス」などの事例を紹介したが、変化のスピードが速いITビジネスに対応するためには民間会社の方が動きやすいためだろう。

自治体が進める電子認証事業

 三重県の北川正恭知事が自ら社長を務める「株式会社サイバーウェイブジャパン(CWJ)」も、IT戦略を積極的に展開する三重県が中心となって2000年6月に設立した民間会社である。事業の柱は大きく分けて2つ。IT社会のインフラとして必要不可欠なサービスである「データセンター事業」と「電子認証事業」を提供する役割を担う。

 データセンターは、都道府県を中心に電子自治体を推進していく中核施設として設置が進んでいるが、電子申請などの受付サービスを24時間365日体制で提供するためには、自治体自らではなく、民間会社の方が対応しやすい面もある。また、三重県の場合、ブロードバンドインターネット環境を、CATV網をメインに構築しており、CWJは県内CATV業者向けにインターネット接続環境を提供する役割を担っている。

 「電子認証、さらに電子決済まで視野に入れたトータルな電子商取引サービス環境を構築しているのは、日本ではまだCWJだけでしょう」(三田衛一取締役)。もうひとつの柱である電子認証事業は、今年6月から電子認証サービスを利用した電子商取引サービスが始まったところだ。年間1万9800円で電子認証のためのICカードを配布し、月額9800円、契約成約手数料なしで、商品カタログ登録、見積依頼・回答、受発注などの電子商取引サービスを利用できる。

 「01年11月から半年間、実証実験を行い、参加企業へのアンケート調査などから月額利用料やICカード利用料を設定した」(三田取締役)。競争力を考慮した価格設定からも積極姿勢が感じられる。同じような企業向けの電子商取引サービスは、楽天市場が提供を行なっているが、本人確認はIDとパスワードで管理している。わざわざICカードを使わなくてもID・パスワードで十分との考え方もあるだろうが、「実証実験に参加していただいた企業は、受発注を行う場合の本人確認にICカードによる電子認証の必要性はご理解いただけたと思う」(三田取締役)と、サービス内容に自信をみせる。

 電子商取引でのネット決済サービスも来年初めには提供する予定だ。地元の有力銀行である百五銀行と第三銀行と提携し、企業間取引での代金振込み処理をネット上で行なえるようになる。さらに今年度中には、指定する運送業者に配送を依頼できる物流サービスも加える計画である。「金融サービスに物流サービスが加わって電子商取引のトータルサービスが提供できることになる」。

 電子認証事業の新しいメニューとして来年からサービスを開始するのが、公共工事の電子入札対応の電子認証サービスだ。国土交通省が昨年11月から開始した電子入札では帝国データバンクだけが電子認証サービスを提供しているが、地方自治体向けに開発された「電子入札コアシステム」に対応した電子認証サービスは、CWJを含む8社が認定され、サービス提供を開始する。「基本的に8社は同じサービスを提供するので、価格以外にどのような付加価値のあるサービスを提供できるかがポイント。中部地区で認定されているのはCWJだけなので、地元での利用拡大をめざしたい」。CWJが発足して2年、地域に密着しながら着々と経営基盤の拡大を進めている。(ジャーナリスト 千葉利宏)

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