大航海時代

<大航海時代>第22篇●新しき勇者たちへ 第58話 ベトナムとバイク

2002/11/18 16:18

週刊BCN 2002年11月18日vol.966掲載

メガフュージョン 取締役 水野博之

 ホーチミン市の人口約700万人。バイクの所有率が約1.1倍というから、赤子まで含めて1人1台はバイクをもっていることになる。電車も地下鉄もないから(バスもほとんどない)、ほかに交通の方法はない。暑くてエアコンはないから、ま、夕涼みかたがた走りまわろう、というわけで、夜も夜中まで勢いよく飛びまわるから、外国からやってきた連中はオロオロするばかりである。

 というのも、交通信号はなきに等しいから、どうやって道を横断してよいか途方に暮れるのである。なにしろ、雲霞のように次から次に湧いてくる相手を前にどうしてよいか分からなくなるのである。ベトナムは永い間、フランスの植民地であったから、道路は放射線状に設計されている。1つのターミナルからほかのターミナルまで走ると、そこでぐるりとひとまわりしてもとにかえってくる。夕涼み、気晴らしドライブにはもってこいの構造だ。1日中でも走りまわれる。右へ右へと回ればよいのだ。

 こうなってくると、道を横断するには、外人には必死の決断がいる。走りまわるバイクの間をこの土地の住人のようにスイスイというわけにはいかない。ホテルの前で一家4人、手をしっかりにぎり合ってキョロキョロ、横断のチャンスをうかがっていた米国人一家が、忘れ物をして部屋に帰って引き返したら、いまだに決断の時を得ないでいる。私を再度見て「こりゃあ、決死の覚悟がいるな」といった。道をわたる度に「決死の覚悟」をしていたら、いくら人生永いといったってとてもたまったものではないだろう。大体、ここは共産国家なのにおまわりさんはほとんど見かけない。そういえば犬もあまりいないようだ。いるのは、バイクの大群だけである。それが勝手に走りまわっている。ベトナムというのは不思議な社会主義国家だ。(エクアトリアルホテル)
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