元気印のインテグレータ

<元気印のインテグレータ>第24回 ネットワーク応用通信研究所

2002/12/16 16:04

週刊BCN 2002年12月16日vol.970掲載

ソフトを無償配布

 業務用ソフトの価格破壊を引き起こしている企業がある。ネットワーク応用通信研究所(井上浩社長)は、日本医師会(以下・日医)のレセコン用ソフト「日医標準レセプトソフト」をオープンソース方式で開発。完成版にあたるバージョン1の無償配布を12月10日から始めた。

 オープンソースとは設計図を開示してあるソフトのことで、その設計図に従って他者が自由に改変できる。レセコンとは、医療機関が診療報酬を請求するための専用コンピュータだ。

 レセコンは、これまで大手ベンダーから数百万円で売られていた。これをオープンソース化し無償で配布し、ハードウェアも含めたシステム全体の価格を従来の10分の1に抑えた。

 これまでは入院施設がない小規模な診療所が主な対象だったが、来年4月には入院施設がある中堅病院にも対応する。すでに全国約100か所の医療機関が同ソフトを使っており、来年度中(04年3月期)には一気に3000か所に増やす。

 通常、ソフト開発ベンダーは独自ソフトの開発に努め、ソースコードは開示しない。また、開発したソフトを自社独自のパッケージにして外販する。マイクロソフトがこのパッケージビジネスで大成功したのは周知の通りだ。

 だが、同研究所は開発したソフトを基本的にオープンソースで無償で配る。収益は、ソフトの発注者(日医)から得る開発費用と、利用者(病院)から得るシステム構築費用のみだ。

 井上社長は、「開発したソフトをオープンソース方式で無償配布するという行為は、ソフトウェア産業のなかで明らかに価格破壊の流れをつくっている。しかし、開発したソフトを利用者に高く売りつけるのは、利用者の側からみれば迷惑な話。ソフトメーカーの論理ではなく、利用者の理論からみれば、安い方がいい。これは自然な流れだ。また、オープンソースであるため、不具合はシステムを手がける事業者や他のソフトメーカーが見つけて、改良を加えられる」と話す。

 一方、レセコンを手がけるメーカーは脅威に感じている。マイクロソフトも、こうした動きに対して、「ソフトウェア産業の荒廃につながる」と警鐘を鳴らす。だが、同研究所のように、腕に覚えのあるソフトベンダーがオープンソース化に踏み切り、開発費用とシステム構築で収益を得る動きが広がっていけば、井上社長の指摘する「価格破壊」につながる可能性もある。(安藤章司)
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