2002年9月に情報サービス産業協会(JISA)主催の視察団長として、欧米金融機関の最先端IT事情を調査してきたので、その報告をしたい。その第一は、彼我のIT投資に対する取り組み姿勢の大きな差である。わが国金融機関の投資は最大手グループでも年間19億ドル(約2375億円)前後であるのに対して、シティグループでは実に51億ドル(約6375億円)、JPモルガン・チェースで47億ドル(5875億円)もの投資を行っている。しかも、そのうち81%が情報系投資で、勘定系投資はわずか19%に過ぎないという(日本経済新聞調査)。これに対して邦銀の場合は大半が勘定系投資に追われているのが実情で、今後長期的に見た彼我の商品競争力に大きな差をもたらすであろうことがつよく懸念される。

 第二は、STP(Straight Thru Processing)化への動きである。証券業界などを中心に資金や事務処理の効率化・コストダウン効果が大きいSTPついてはアメリカ、ヨーロッパとも早期導入に極めて熱心である。一方、STPと共にわが国でも大きく話題になったT+1については、費用対効果の面から、それほど急ぐ必要はないという意見が多かったことも見逃してはならない点であろう。

 第三は、セキュリティとリスクマネジメントへの体制強化である。昨年9月11日、私は社会経済生産性本部のIT視察団長としてあの時間に現場すぐ近くにいた。欧米ではそれ以降の1年間でのセキュリティやディザスタ・リカバリー、ビジネス・コンティニュイティ・プラン(BCP)などへの対応策の進展にはまさに目を見張るような変化が起きている。

 BCP業界最大手のEMCによれば、全データのうち80%がミッション・クリティカルのデータであり、15%がその関連データで、多少遅れてのバックアップでよいものはわずか5%に過ぎないという。とくに最近の技術の発達によって、遠隔地間におけるリプリケーションやリモート・ミラーリングの技術が高度化し、複数のバックアップ・センター間におけるBCPが至るところで動き始めている。米連邦準備理事会などは、全金融機関に対し緊急白書を発表し、リアルタイムバックアップのためのアクティブ・オン・アクティブモデルの早期実現を要請したのはその1例といえよう(今回の詳細な報告書については、「JISA会報」(03年1月刊)をご参照いただければ幸いである)。