e-Japan最前線

<e-Japan最前線>25.e-エアポート構想が始動

2003/01/01 16:18

週刊BCN 2002年12月23日vol.971掲載

生体認証を使い本人確認


 今年6月のサッカーワールドカップ開催に合わせてスタートした「e-エアポート」構想の実証実験が、12月から第2段階に入った。成田空港を中心としたアクセス交通などの総合情報提供サービス「e-インフォメーション」の第2フェーズを開始したほか、年明けの1月からは航空チェックイン手続きの電子化に関する実証実験「e-チェックイン」が始まる。2003年度には手荷物を対象にした実験も計画されており、少しずつe-エアポートの姿が見え始めてきた。

 今回の目玉は、顔や眼球の虹彩というバイオメトリックス(生体認証)情報を使って本人確認を行う「e-チェックイン」の実証実験だ。モニターの人に、事前にパスポート情報とバイオメトリックス情報を登録してもらい、本人IDを登録したICチップの入った携帯電話ストラップまたはICカードを発行する。本人のバイオメトリックス情報を、そのまま読み取って事前に登録したバイオメトリックス情報と照合することも可能だが、今回の実験ではICチップの本人IDからバイオメトリックス情報を呼び出してから照合を行うことで精度を高める。

 e-チェックインの狙いは、セキュリティを確保しながら、搭乗手続きの簡略化・迅速化を図ることにある。「国際的にも、セキュリティを強化するためにバイオメトリックス情報をパスポートに搭載しようという動きもある。国際標準もまだ決まっていないが、準備を進めておく必要はあるだろう」(国土交通省総合政策局情報管理部情報管理課・鈴木貴典課長補佐)。今回、本人確認にバイオメトリックス情報を利用したのは、国際的な動向を考慮した対応である。

 課題は、搭乗手続きの簡略化・迅速化だ。現在の搭乗手続きは、チェックイン、セキュリティゲート、搭乗ゲートなどを通過する必要があるが、チェックインの段階で本人確認すれば、あとはICチップをかざすだけでスムーズに通れることが望ましい。しかし、現時点では実験モニターの人の手続きだけを簡素化することはできないため、チェックした後に航空乗務員用のゲートのようなところを素早く通過できたり、搭乗ゲートも優先的に通したり、利用者にメリットが感じられるような仕組みを検討する。

 さらにICチップがついた携帯電話ストラップを利用するモニターに対しては、情報提供サービスの実験も行う予定だ。ICチップがどこの地点を通過したかをチェックすることで、利用者が今どこにいるかを把握することができる。あとは搭乗予定の飛行機の情報があれば、本人の携帯電話に「急いでください」とか、「時間がありますのでショッピングはいかが」とか、いろいろな情報をメールで配信することが可能である。

 「成田空港には今年10月から自動チェックイン機が導入された。本来なら自動チェックイン機にカメラも内蔵してバイオメトリックス情報を照合し、入出国管理まで一度に全部済ませることができるシステムが理想的だろうが、現時点では二度手間になる部分がある点はご理解いただきたい」(鈴木課長補佐)。

 さらに、ワールドカップの前後に第1フェーズの実験を行ったe-インフォメーションの実験も第2フェーズがスタートしている。第1フェーズでは1日平均約5000件のアクセスがあり、サービスコストの検証も踏まえて03年度から実用化に踏み切るかどうかの最終決断を行う考えだ。03年度の予算要求では、ICタグを取り付けることで重たい手荷物から旅行者を解放しようというサービスや、自動翻訳機を外国人旅行者に貸し出すサービスの実証実験も検討され、e-エアポートのメニューもますますバラエティに富んできたと言えそうだ。(ジャーナリスト 千葉利宏)
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