元気印のインテグレータ

<元気印のインテグレータ>第26回 NTTデータ(下)

2003/01/06 16:04

週刊BCN 2003年01月06日vol.972掲載

電子自治体の民間委託

 電子自治体システムを民間企業へアウトソーシング化する動きが本格化している。多くの自治体は、2005年までに、電子申請や調達、文書管理など、さまざまな情報システムを本格稼働させる。だが、市町村合併の時期と重なることから、これらの情報システムを設計しようにも、自らの市町村合併の動向が定まらず、詳細な設計ができない問題にぶつかっている。

 ある自治体の情報システム担当者は、「電子自治体の骨子は総務省がすでに枠組みをつくっていて、どの自治体でも情報システム上の大きな違いはない。自分の行政区だけだったら比較的簡単に構築できるものの、合併問題が絡んでくると、どうしてもシステム設計の時期が先送りになり、短い納期で“突貫工事”をせざるを得なくなる」と話す。

 この問題を解決する方法の1つが、アウトソーシング化である。「民間企業へのアウトソーシングを積極的に行うことで、合併時のシステム変更に柔軟に対処できるようになる」(同担当者)と分析する。つまり、アウトソーシングしてしまえば、合併したときに、アウトソーシング先の民間企業がうまく市町村間の差異を吸収して、円滑に運用してくれるというものだ。

 実際にシステムを購入するのとは違い、契約の変更だけで合併を乗り切れると自治体側は考える。住民基本台帳システムや財務システムなど基幹系とは違い、電子申請や電子調達などの情報系は、アウトソーシングしやすい特性もある。

 NTTデータ(青木利晴社長)では、ここに目をつけて、アウトソーシングの受注に向けて力を入れる。すべてのシステムがアウトソーシングに対応しているわけではないが、1つの取り組みとして、昨年10月から、自治体向けのマルチペイメントネットワークを使った電子納付をASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)方式で開始。同社が運営する「公金収納センター」を使うことで、自治体はサーバーなどを設置せず“サービス”だけ利用できる。

 藤田弥生・電子自治体ビジネス推進部課長は、「アウトソーシングビジネスには、今後とも力を入れていく。サービスを構築・運用する費用は当社の“持ち出し”になるが、他社に先駆けて、ASPサービスの品揃えの拡充を図り、差別化を図る」と話す。最初は“持ち出し”で運用したとしても、合併で揺れる自治体の需要にいち早く対応することで、最終的にシェアを確保する構えだ。 (安藤章司)
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