e-Japan最前線

<e-Japan最前線>27.行政手続きのオンライン化サービス

2003/01/13 16:18

週刊BCN 2003年01月13日vol.973掲載

 2003年、いよいよ行政手続きのオンライン化サービスが実現に向けて動き出す。懸案となっていた行政手続オンライン化関係3法が昨年12月に臨時国会で成立、サービス開始に向けた法的な基盤は整った。政府が推進してきた電子政府・自治体も、国民にとって利便性がまだ実感できていないだけに、今年から本格的に始まるサービスが国民にどのように受け入れられるかが最初の試金石になりそうだ。

公的個人認証がポイント

 オンライン化3法は、次の3つの法律で構成されている。まず国民と国・地方自治体との間の行政手続き約2万1000と、行政機関同士の行政手続き約3万1000の合計5万2000を、書面だけでなくオンラインでも認めるための「行政手続オンライン化法」。電子納税などオンライン化法だけでは手当てが不十分で例外を定める必要がある71の個別法律の改正をとりまとめた「整備法」。申請書などの書面に署名捺印するのと同じ法的効力を実現する「公的個人認証法」である。

 オンライン化サービスのイメージはこうだ。書面の場合、まず申請書類を受け取り、必要事項を記入して署名捺印し、住民票の写しなどの必要な添付書類をそろえて、役所に出向いたり、郵送したりしていた。オンライン化されると、パソコンで利用する申請などのページを開き、必要事項を入力し、公的個人認証サービスで発行された秘密鍵と電子証明書の入ったICカードを差し込んで、署名捺印の代わりに電子署名のボタンをクリックすれば、手続きが完了する。住民票の写しは必要なくなる。ポイントは公的個人認証サービスだ。「今年6月には、全国規模で実証実験を開始し、それを踏まえて年内にはサービスをスタートさせる」(総務省自治行政局自治政策課・猿渡知之情報政策企画官)段取りで準備が進められている。

 公的個人認証サービスの手続きは、さすがに役所に出向く必要がある。利用希望者は、同サービスに対応した「ICカード」を持参し、市町村の受付窓口で申請書を提出。住基データと運転免許証などで本人確認を行ったあと、窓口に設置した暗号鍵を生成する鍵生成装置を使って利用者本人がICカードに公開鍵と秘密鍵の2つを書き込む。次に、電子証明書発行端末で、公開鍵だけを提出して都道府県単位で設置される認証局に登録し、30秒ほどで電子証明書が発行され、それをICカードに書き込んで手続きが完了する。

 「1回の発行手続きによる有効期限は3年。手続き時に実費程度は徴収することになる。実証実験で認証局のランニングコストなどを見て決めるが、数百円程度には押さえたいところ」(猿渡氏)。発行手続きもそれほど繁雑ではなく、費用もほとんど負担にはならないようだ。また、受付時の本人確認のほか、転居や死亡などで失効した電子証明書の失効リストを認証局が作成するときに住基ネットを利用する。電子証明書を受け取った側が、証明書の有効性を確認するためのリスト作成である。

 また、公的個人認証サービスは、民間認証事業者(金融機関等)がオンライン上で電子証明書を発行する際の本人確認にも使用できる。電子商取引等に活用される様々な電子証明書の普及も期待される。「鍵生成装置などとICカードのインターフェイスは公開する。電子証明書などを格納するICカードは、(今年8月以降に発行予定の)住基カードでなくても、金融機関やクレジットカード会社が発行するICカードでも可能であり、どう対応するかは、各カード企業の戦略だ」(猿渡氏)。金融系カードと公的個人認証を組み合わされば、インターネット上で様々な決済サービスを実現できる可能もあるだろう。IT社会において欠かせないインフラが、いよいよスタートすることになる。(ジャーナリスト 千葉利宏)
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