e-Japan最前線

<e-Japan最前線>28.六本木ヒルズ

2003/01/20 16:18

週刊BCN 2003年01月20日vol.974掲載

 2003年、東京に巨大な街が相次ぎ動き出す。超高層ビルが10棟以上林立する汐留地区、新たに新幹線の発着駅となる品川駅の東口地区、そして六本木に巨大な姿を現した六本木六丁目市街地再開発地区「六本木ヒルズ」である。森ビルが中心となって開発を進めてきた六本木ヒルズのオープンは今年4月25日。「文化都心」をメーンコンセプトに、オフィス棟の最上階には美術館が配置される。昨年、話題となったJR東京駅前の丸ビルと規模を比較すると約5倍という大きさだ。

ITインフラの実証実験

 この六本木ヒルズで、政府が進めている「e!プロジェクト」が実施されることが決まった。すでに4つのプロジェクトが相次いで行われる予定で、「ほとんどテストベッド(実験場)となりつつある」と、森ビルMII事業室の中江川潤課長も思わず苦笑いするほど。裏を返せば、六本木ヒルズはIT実験をすぐに実施できるだけの最先端のITインフラが装備していることの証でもある。

 森ビルでは、テナント向けにインターネット・イントラネットサービスを提供するため、東京・港区に保有・管理しているオフィスビルなどを光ファイバーで結ぶ情報通信ネットワークの整備を進めてきた。六本木ヒルズにも総延長156.4キロの光ファイバーを敷設し、敷地内に無線LANのアクセスポイントを15か所設置。また、複数の通信事業者の回線を引き込み多重化したほか、構内携帯電話網の構築でも複数事業者と契約し、NTTドコモのFOMAも全館で利用できる。

 また、森ビルでは文化事業として研究・教育機関「アカデミーヒルズ」(理事長・高橋潤二郎慶大名誉教授)を運営しており、理事には政府のIT戦略本部の本部員でもある村井純慶大教授や国領二郎慶大大学院教授などの学識者も名を連ねている。このアカデミーヒルズ内に、昨年1月産官学に共同研究組織「赤坂・六本木地区IT複合文化都心構想コンソーシアム」を設置、都心のワークスタイルや文化・エンターテインメントを楽しむライフスタイルを想定してIT活用のあり方の研究を進めていた。今回のe!プロジェクトの実施も、アカデミーヒルズに参画する学識者のアドバイスで、各省庁に対して六本木ヒルズのITインフラの提供を提案し実現したという。

 今回の実験で注目されているものの1つが、RFIDタグを使って情報提供を行う実験だ。六本木ヒルズは、美術館のほかに、レストラン&ショップ約210店、9スクリーンのシネマコンプレックス、390室のホテル、テレビ朝日のスタジオなどが配置され、さまざまなイベントなどがあちらこちらで開催される。RFIDタグをもった利用者が六本木ヒルズ内に入ると、その利用者と場所を認識し、趣味や嗜好、過去の利用履歴などのデータからプロファイルして、六本木ヒルズの最適な情報を利用者の携帯電話や館内に設置された情報端末などを通じて提供するという仕組みだ。

 六本木ヒルズにも、アカデミーヒルズが設置され、会員向けに図書館も設置される。この図書館では、書籍にICチップのシールを貼り付け、図書分類通りに本を並べなくても、目的の本がある場所をすぐに検出したり、貸し出し状況などの管理なども行う実験が予定されている。また、複数施設の共通会員証としてICカードを発行して、個人認証機能をもたせることで、さまざまなサービスを提供することも予定している。六本木ヒルズのオープンまで3か月。ITという切り口で見ても、新しい発見に出会えそうな街である。(ジャーナリスト 千葉利宏)
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