e-Japan最前線

<e-Japan最前線>29. 共同OS戦略

2003/01/27 16:18

週刊BCN 2003年01月27日vol.975掲載

 電子自治体を実現するための情報システムを、総務省と地方自治体が協調しながら開発を推進する「共同アウトソーシング・電子自治体推進戦略」が本格的に動き出す。03年度予算を使って、総務省が委託開発費を出し、委託を受けた各自治体がIT企業と協力しながら業務用アプリケーションシステムを開発。その結果を全国の自治体でも活用しようという仕組みだ。総務省では、「住民サービスの向上」、「地方自治体の業務改革」、「IT関連産業をはじめとする新需要創出」という“一石三鳥”の実現をめざす。(ジャーナリスト 千葉利宏)

情報システムの“型紙”をつくる

 「情報システムを構築するのは、オーダーメイドで作るか、既製服(パッケージ)を買ってくるか、あとはイージーオーダーか、の3つしかない。今回開発するのはイージーオーダー洋服の“型紙”。このやり方でなくては、全国3000の地方自治体で情報システムを構築するということは難しいと考えている」(総務省自治行政局自治政策課・猿渡知之情報政策企画官)。

 猿渡企画官のわかりやすい例えのまま表現すれば、今回の戦略は全国の自治体が協力しながら、電子自治体という洋服を作るための「型紙セット」を作ろうというわけだ。昨年12月に成立したオンライン化3法で約5万2000の行政手続きをオンライン化する法的な基盤が整い、まずは住民と行政の間の手続き(フロントオフィス業務)約2万1000が2003年度中にオンライン化される予定だ。この03年度のシステム構築による需要効果で約7000億円、システム運用にともなう需要効果で約3000億円が見込まれる。さらに、05年度までに行政間の手続き(バックオフィス業務)もオンライン化する計画で、そのシステム構築で約1兆8000億円、運用で約7000億円という効果を見込む大型プロジェクトである。

 各自治体では、型紙を利用してカスタマイズ(改良)し、短期間にピッタリのシステムを導入できることになる。さらに型紙をカスタマイズして開発された新しい型紙も登録することで、「絶えず最先端の型紙セットが揃っている」(猿渡企画官)環境が整備され、登録された型紙の間で優劣を争う競争原理も働くことになる。かつてIBMがメインフレーム時代に巨大なシステム体系を構築したが、ほかのIT企業がそのシステム体系に組み込める、より優れたモジュールを開発することで、IBMのビジネスを中小・ベンチャー企業が侵食していったという歴史があった。猿渡企画官のイメージしているのもそれと共通している。電子自治体という巨大なシステムを構成するモジュールを、業務に精通している地方自治体の職員と、各IT企業の技術者が協力しながら開発し、全体のシステムを動かそうという考え方だ。

 この連載でも以前に静岡県が県内の市町村と協力しながら電子入札システムの開発をスタートした事例を紹介した。今年度中にシステム要件を取りまとめる作業を進め、03年度からシステム構築に着手する。県と市町村が協力し、いろいろな規模の地方自治体でも利用できる“型紙”に仕上がるという仕掛けである。

 さらに今回の戦略では、情報システムの発注業務の改革を進める狙いもあるようだ。「システム開発に際して新しい業務フローを考えるのは本来、事務職員の仕事。業務を知らないシステムエンジニアだけでは適切な要件定義はできないのでは」(猿渡企画官)。これまで地方自治体でのシステム開発は大手ITベンダーに丸投げされるケースが多かったが、今後の電子自治体を考えた場合、業務に精通し、かつ業務改革のアイデアをもっている自治体職員がシステム開発の先頭に立つことが不可欠だろう。地元IT企業を育成し、地域経済にも大きく寄与する仕組みとして機能させるには、各地方自治体内部の人材育成が重要なカギを握っている。

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