元気印のインテグレータ

<元気印のインテグレータ>第31回 アセンド

2003/02/10 16:04

週刊BCN 2003年02月10日vol.977掲載

学校用事務システムを全国へ

 アセンド(鳥取県倉吉市、鈴木由記夫社長)は、高校・短大向け事務システム「学事エース」の立ち上げに力を入れる。1995年の設立以来、もともとは地元鳥取県を中心に、ソフトの受託開発を手がけていた。社員は社長を含めて12人の小さな企業だが、それでも「受託開発だけでは、経営的に苦しい」ことから、パッケージの開発に踏みきった。

 「学事エース」の開発には約3000万円を投資し、2年の期間を費やした。同県の高校や専門学校、単科大学の事務システムを受注した際のノウハウを蓄積しつつ、パッケージソフトに仕上げた。鳥取県立日野高校、同鳥取湖陵高校、同米子高等技術専門校、鳥取農業大学など6校への納入実績をもつ。

 鈴木社長は、「パッケージ化し、販売網を整備すれば、鳥取県だけでなく、全国に向けて販売できる」と意気込む。

 だが、学校用の事務システムは競合が多い分野。富士通やNECなど国産ベンダーが受注するケースが多い。

 「大手ベンダーの学事システムは、学校ごとに仕様を変更するカスタマイズ方式が中心。これに対して、当社の学事エースは、基本的にパッケージのまま使うことを前提にしている。メニュー項目は約250種類、帳票は約80種類と、数多く用意し、できるだけカスタマイズが発生しないように設計した」

 「パッケージだけで使えば、1システムあたり480―600万円と大手ベンダーの約半額で稼働できる。多少のカスタマイズが発生しても1000万円以内で収まる」と話す。高コストの大手ベンダーに比べ、低コストで従来通りの品質の学事システムであるのが最大の特徴だ。

 「ソフト開発の多重下請構造では、たとえば大手ベンダーが受注しても、実際に開発するのが、われわれのような中小ソフト会社になる。顧客は大手ベンダーのブランドのためだけには2倍ものカネを支払っている。投資した金額ではなく、いかにコストを下げて、効率を上げるかを訴求していく」と、システムの中身で大手ベンダーに勝負をかける。

 昨年末から、販売代理店を集め、今年春から全国的に販売を始める。来年度(04年3月期)は年商2億円を達成し、学事エースの開発に着手して以来の黒字化を目指す。「販路開拓に予想以上の時間がかかったが、来年度には全国規模での商談ができる販売体制に目途がついた」と自信を見せる。(安藤章司)
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