中国ソフト産業のいま

<中国ソフト産業のいま>8.データを示す日中の関係

2003/02/24 20:43

週刊BCN 2003年02月24日vol.979掲載

 前号では、オフショア開発を積極的に進める米国の情報サービス会社が、中国との結びつきを強めていると指摘した。では、日中ソフト産業の関係はどうなのか。統計資料を基にして大局的に押さえてみたい。(坂口正憲)

 いささか古いデータだが、情報サービス産業協会(JISA)が「2001年度・海外取引および外国人就労の実態調査」を発表している。興味深い内容なので参考にしたい。結論から先に言えば、日本のソフト産業と中国の関係は、意外に進んでいる。

 同調査に回答した企業294社の4割、122社で外国人が国内就労しているが、最も数が多いのは中国人である。正式雇用する企業が83社あり、雇用者数は290人に上る。パートや派遣を含めると500人を上回る。2位韓国人の4倍以上とダントツだった。中国人に限ったことではないが、企業規模が大きくなればなるほど、外国人を国内で雇用する企業の割合が高い。売上高10億円未満では26%だが、100億円以上の企業では62%になる。

 それは人件費削減が大きな目的ではない。外国人技術者に対して期待する効果として、「人件費削減」は1割でしかない。残り9割は「専門能力の高さ」など前向きなものである。背景として、大手情報サービス会社が開発業務を中国企業へ委託する割合を高めている。その際、中国側との橋渡し役ができる、能力の高い中国人SE(システムエンジニア)を日本国内で抱えるケースが多い。

 同調査によると、海外企業へ開発業務を委託した実績があるのは全体の3割である。どの国に委託したかまでは明らかになっていないが、カスタムソフトの輸入実績がある企業の半数以上は、中国と取引している。有力な委託先であるのは間違いない。業界が好景気に沸いていた01年度当時でさえ、日本のソフト産業と中国の関係は水面下で進行していた。ユーザーの情報化投資に対するコスト要求が厳しい現在、その関係はさらに深まっていそうだ。調査段階で、外国人雇用や海外発注実績がない企業の50%近くは、「今後の状況によって方針を判断する」と答えている。今まさに、この“静観派”が中国との関係づくりを模索しているのではないか。
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