元気印のインテグレータ

<元気印のインテグレータ>第34回 首都圏コンピュータ技術者協同組合

2003/03/03 16:04

週刊BCN 2003年03月03日vol.980掲載

SEを個人事業主に

 利益を出す近道は、固定費を変動費に変えることだ。オフコンからオープンシステムの開発まで幅広く対応する700人のSE(システムエンジニア)を組織化する首都圏コンピュータ技術者協同組合(横尾良明理事長)は、システム開発の変動費化を強く提唱する。

 700人のSEは、すべて個人事業主で構成しており、組合全体で年商35億円を売り上げる。技術者はもともと独立志向が強く、組合形式に馴染みやすいことも組織運営の追い風になっている。

 横尾理事長は、「ソフトウェア開発やシステム構築を手がけるSEの仕事は、季節要因が大きい。たとえるなら大工と同じ。一年を通じて仕事が増えるときもあれば減るときもある。SEを大量に社内で抱えている企業は、仕事の端境期の分を繁忙期の売り上げで埋め合わせなければならない。この点、当組合のような柔軟な組織体制であれば、効率のよいソフト開発やシステム構築ができる」と話す。

 折しも、発注者と受注者のルールを定める下請法が早ければ来年度中にも改正される見通し。改正下請法では、これまで対象外だったソフト・サービスの取り引きも規制の範囲に入れる。同法では、発注書にもとづいた明確な取り引きを義務づけており、発注者・受注者の両者にとって、取り引きの基盤整備が大幅に進む。アナログ的な部分が多かった従来のソフト・サービスの取り引きも明文化が促される。

 横尾理事長は、「受発注の基盤が整うことで、取り引きがよりスムーズになる。このタイミングでソフトウェアの電子的な取引市場(BtoB市場)の立ち上げに向けた準備を始める」と話す。

 往々にして曖昧だった発注書が明確になることで、ソフト・サービスの電子取引が一気に進むと期待が高まる。e-Japan計画では、政府や自治体における電子登録、入札、納品と、ソフトウェア・サービスの仮想取引を推進する。同組合においても受注拡大に向けた電子取引市場の整備を進める考えだ。

 「建設業で、大工1000人を正社員として雇用しているような会社はない。1000人のSEを抱えるのはコンピュータ業界くらいなもの。伸びる会社は、人件費の流動化を進めている。季節変動が大きいソフト開発で大量のSEを抱えるのは、大工1000人を正社員で雇うようなもの。当組合に発注して固定費を減らせば、コスト低減圧力が強いソフト開発・システム構築でも利益が出る」と、売り込みに余念がない。(安藤章司)
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