WORLD TREND WATCH

<WORLD TREND WATCH>146回 Linuxベンダーが結集で追い風

2003/03/17 16:04

週刊BCN 2003年03月17日vol.982掲載

 欧米有力Linuxディストリビュータは、サーバーのLinux普及の道筋は見えたと考え、今後はデスクトップでの普及に注力する姿勢を強めている。これまでも世界最大量販店のウォルマートがデスクトップLinux「Lindows」搭載の低価格パソコンを発売し、人気も高く注目を浴びていた。(中野英嗣●文)

デスクトップの普及も可速

 欧米有力Linuxディストリビュータは、サーバーのLinux普及の道筋は見えたと考え、今後はデスクトップでの普及に注力する姿勢を強めている。これまでも世界最大量販店のウォルマートがデスクトップLinux「Lindows」搭載の低価格パソコンを発売し、人気も高く注目を浴びていた。しかし、本来デスクトップで普及させるには、個々のベンダーの努力ではなく、Linux勢力結集が必要と考えられていた。2003年2月には、独SuSE、ザンドロス、クシミアン、コードウィーバース、サン・マイクロシステムズなど、デスクトップLinuxベンダーが結集して「デスクトップLinuxコンソーシアム(DLC)」を結成した。

 このDLC設立にはLinuxクリエータのリーナス・トウバルズ氏も応援した。DLCはベンダー中立を標榜し、有力パソコンベンダーへもLinuxバンドルを働きかけ、またユーザーサポートのアドバイザリーボードの設立も検討中だ。世界的にベンダー固有のプロプライエタリ仕様から、オープンスタンダード採用潮流の強まりとともに、マイクロソフトの長期ライセンス契約への反発もあって、Linux市場は強い追い風を受け始めている。これまでも米長距離通信ベライゾンの携帯電話会社が数千台のLinuxデスクトップを導入していた。

 ここへきて、数万台単位のLinuxユーザーも目立ち始めた。世界的なホテルチェーンのヒルトンは、ザンドロスLinux搭載パソコン1万台の導入を決定した。もちろん米SIerでもデスクトップLinuxの普及を後押しするVAR(付加価値再販業者)も増えている。その1社で、ヒルトンに対し大量のLinux契約を成功したインテレクトソースのルナー・ビンセントCEOは、Linuxへの期待を次のように語る。


 「Linuxデスクトップのシェアが2ケタになるのは近い。このシェアが15-30%に到達すれば、Linuxがデスクトップでも全面的に受け入れられるクリティカルマスとなる。これも今後5年のうちに実現する。ISV(独立系ソフトウェア会社)の中でもLinuxデスクトップを支持する勢力は強くなっているからだ」メリルリンチのアナリスト、ピエール・ドナー氏も次のように解説する。「これから世界のハイテクを牽引するのはパソコンではなく、デジタルAV(音響映像)機器だ。ウィンドウズとAVは相性が悪く、ソニー・松下電器が共同開発するAV用Linuxが完成すると、AVでもLinuxが主力OSになる。これがコンシューマパソコンでのLinux普及を加速する」

 このAV動向を見逃せないレッドハッド、サン、ザンドロスはDLCの支援も受けて、サンのスターオフィス(国内ではスタースイート)とAVのインターオペラビリティの強化を推進すると発表した。またDLCのコードウィバースはマイクロソフトのオフィス XPなどと互換性のあるLinuxアプリケーション「クロスオーバーオフィス」の強化を発表した。さらにIBMもソニー・松下Linux連合の支援を表明した。
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