中国ソフト産業のいま

<中国ソフト産業のいま>11.世界トップ50を目指す男

2003/03/17 20:43

週刊BCN 2003年03月17日vol.982掲載

 2号にわたり、中国ソフト開発会社の成長株を紹介してきた。そこで今号は、中国のNo.1パッケージベンダーを取り上げる。用友軟件(UFSoft)である。UFSoftは、財務会計など業務ソフト分野では45%の圧倒的な国内シェアをもつ。最近では大企業向けERP(基幹業務システム)パッケージに力を入れ、2002年は独SAPを押さえて22%のトップシェアを確保した。02年上半期に同社は売上高を50%以上伸ばしているが(半期で約31億円)、その6割はERPパッケージによるものだ。(坂口正憲)

 パッケージ製品では、外国製品が優位な中国市場で、国産製品がトップシェアを握るのは希なケースである。中国に進出する日系企業での採用も多い。たとえば、ユニクロや広州いすゞなどが同社製品を導入している。要求基準が高い日系企業が現地採用している点を考えると、製品の品質は高そうだ。また、中国全域に広げた代理店網によるサポート体制にも定評がある。

 UFSoftを語るうえでは、同社社長の王文京氏(36歳)を外せない。王氏は、いわば「チャイニーズドリーム」を体現した人物であり、米ビジネスウィーク誌「The Stars of Asia」の25人の1人にも選ばれている。江西省の僻村に生まれながら、中央官庁まで上り詰め、政府機関の会計ソフト開発に携わる。だが88年、24歳でエリート職を捨て、徒手空拳でUFSoftを設立した。天安門事件直後で、誰も私企業に見向きもしなかった頃である。それが今や3000人の従業員を抱え、株式公開により300億円の個人資産をもつ、中国トップ級の金持ちとなった。

 その王氏がいま注目しているのが日本である。02年末には、主に日系企業を対象とした受託開発専門の子会社を設立した。王氏は香港メディアのインタビューに応え、「日本企業がどんどん中国企業への発注を増やしている。これは絶好のチャンスだ」と述べている。日系企業との取引では、事業の幅が広げられるだけではなく、「日本の進んだソフト開発管理を学べる」点が魅力となっている。現代版の立身出世を成し遂げた王氏は、2010年までにソフトメーカー世界トップ50の仲間入りを目指している。
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