元気印のインテグレータ

<元気印のインテグレータ>第38回(最終回) IIJテクノロジー

2003/03/31 16:04

週刊BCN 2003年03月31日vol.984掲載

アウトソーシング事業に乗り出す

 システム構築事業者のIIJテクノロジー(鈴木幸一社長)は、企業のERP(統合基幹システム)など基幹系システムのアウトソーシングに力を入れる。IIJグループは、従来からインターネット接続サービスを基盤としている。このため、業務系システム分野の開拓は今後の課題だ。2月には最新式のデータセンターを横浜市に開設したのを機に、業務系システムのアウトソーシング事業を本格化する。

 数十億円の建設費を投じた同データセンターは、延べ床面積1万9000平方メートルと大規模だ。今後1年間で大企業の情報システムを2、3案件獲得し、稼働率を50%に高める計画だ。このデータセンターは、免震構造や停電時に48時間稼働し続ける自家発電機能など「国内有数」(同社)の災害に強い設計が特徴。

 同社は主に、IIJグループのデータセンターを基盤としたシステム構築を手がけており、センターに入居する企業のシステム構築を受注している。吉原勉・常務取締役は、「データセンターの強みを発揮するため、アウトソーシングの受注に力を入れる。とくに、これまでIIJグループが弱かったERPやCRM(顧客情報管理)、SCM(サプライチェーンマネジメント)など、業務システムのアウトソーシングを強化する」と話す。

 年商約180億円のうち、現在はシステム構築の売り上げが約8割を占め、アウトソーシングは2割にすぎない。これを、今後5年以内で年商500億円にまで増やし、アウトソーシング比率を全体の4割に増やす。顧客ターゲットとなる大手企業は、自前でデータセンターを所有していることが多い。そこで動く基幹系システムを、同社のデータセンターへと移動させ、アウトソーシングとして受注するのが基本的な筋書きだ。

 吉原常務は、「社内では“引っ越しプロジェクト”と呼んで、顧客企業の基幹系サーバーを当社の新設データセンターへ移す事業を推進する」と話す。

 IIJグループは、昨年7月以来、電力系通信事業者のパワードコムと事業運営の一体化について商談を続けていたものの、3月末でそれを打ち切った。2月には約45億円の第三者割当増資を発表し、財務体質の強化も図った。データセンターへの多額の投資をアウトソーシングなどで回収できるかどうかが、今後の経営を左右する。(安藤章司)
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