WORLD TREND WATCH

<WORLD TREND WATCH>第149回 米大企業にWi-Fiが急速に普及

2003/04/07 16:04

週刊BCN 2003年04月07日vol.985掲載

4割以上がすでに導入


 これまで米国では、ワイヤレスLANの標準規格(Wi-Fi)に関してセキュリティや信頼性、既存システムとの相互運用性などの課題が指摘されていた。このため、ワイヤレス関連ベンダーは、長い時間をかけて問題解決に当たってきた。これにより2002年中盤からは、米国エンタープライズ市場でWi-Fi需要が急速に高まってきた。03年1月のヤンキーグループの調査では、米大企業の41%がすでにWi-Fiを導入し、今後1年以内の導入予定は27%となっている。米誌インフォワールドによるCIO調査でも、導入済みが42%、今後6か月以内の導入予定が33%で、いずれも高い数字となった。

 いずれにしても04年には米大企業の70%がWi-Fiを使う見込みだ。とくにベッド数、医師やナースが多い大病院で導入が進んでいる。ニューヨークのメモリアル・メディカル・センターもその1つでCIOのフランク・ベイ氏は「病院内では自由に移動できるネットワーク環境がとくに重要だからだ」と語る。さらに、ベイCIOは「当センターでは4500万ドル(54億円)の予算でWi-Fiを導入した。Wi-Fiはどこからでも医師・ナースに患者記録へのアクセスを許し、しかも患者データセキュリティも心配ないようになった。この固定されない場所からのアクセスは、1日中移動する職員にとって必要不可欠なITだ」と補足した。

 また、同センターは技術の成熟したWi-Fi802.11bを採用した。それは11bだと、暗号処理や認証、ロ-ミングなど必須のワイヤレス機能を安く安定して提供するアクセスポイント機器や制御装置が入手できるからだ。一方、空港ではなく飛行場という広域でのWi-Fi採用で注目を集めるのがエキスペリメンタル・エアクラフト協会(EAA)だ。EAAは1つの飛行場と回りに散存するオフィス群を擁し、飛行場では年数回の割合で航空ショーを開催する。航空ショーでは平均1万4000人が3日間の開催期間中にテストフライトを試みる。そして数日にわたってショーを見学するため、飛行場周辺に5万人がキャンプする。

 EAAはこれら数万の人々のために期間中、売店やレストランを開く。この売店や有料フライト料金徴収のため150-200台のレンタルPOSを設置。参加者のネット接続やPOSデータの収集にはWi-Fiが必要だ。EAAは8年前からAT&Tなどとワイヤレスシステムを検討したが、実用化のめどが立たず02年7月にやっとWi-Fiを導入した。

 普及が進むWi-Fだが、米エンタープライズCIOは、まだ多くの課題があると指摘する。インフォワールドは03年3月、次のような問題点を指摘する調査を発表した。重複解答で相変わらず、セキュリティ、カバー領域、信頼性、通信速度、仕様の変更が高い比率で課題として指摘されている。EAAのCTOのエリー・ゴングス氏は「Wi-Fi導入で意外と大切なのは、ネットワーク全体の再設計やワイヤレスに精通したITスタッフが社内にいないことだ。コスト的にもまだ高く、これは普及が拡大すれば自動的に解決されるだろう」と語る。
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