WORLD TREND WATCH

<WORLD TREND WATCH>第151回 着実にプレゼンス強める

2003/04/21 20:29

週刊BCN 2003年04月21日vol.987掲載

 2003年米国においてLinuxは主力のビジネス市場において着実にプレセンス(存在感)を強めている。米CRN誌のSIer(システムインテグレータ)対象の「Linuxは1年以内にウィンドウズのオルタナティブ(代替)になるか?」の質問回答でもLinux普及が裏付けられる。SMB(中小企業市場)対象ではイエスとの回答は45%であるのに対し、ノーは35%となった。これに対して、中堅・大企業対象ではノーが39%でイエス37%を上回るが、イエスは02年夏調査より9ポイント増加している。(中野英嗣●文)

米市場のLinux

 この調査結昇についてCRNは、「Linuxは着実に米市場に根付いてきた。しかし、Linuxでは技術認定という課題が市場で大きくクローズアップしてきた」と分析した。02年2月の調査では、Linux普及を阻害する要因は、(1)アプリケーション不足60%、(2)ユーザー受け入れ体制51%、(3)技術サポート47%、(4)トレーニング41%、そして(5)技術認定28%の順位であった。この阻害要因に関する03年2月調査では、要因の順位が次のように大きく変化した。回答率トップは技術認定28%で2位はアプリケーションであるが、その回答率は前回の60%から19%へと激減した。これ以外の3要因はそれぞれ14-16%となった。

 この変化についてCRNは、ユーザーのLinux導入が本格化して、自社IT要員の技術認定取得に多くの企業が取り組み、どの認定を取得するかを選定し始めたからだと分析する。技術認定ではレッドハットなどLinuxディストリビュータの行うコースやIBM、ヒューレット・パッカードなどベンダーが行うもの、さらに特定企業に依存しないLinux普及団体の実施するものなどが入り乱れている。しかし最近では、ベンダー非依存認定に人気が集中しており、中でも「Linuxプロフェッショナル・インスティチュート(LPI)」認定に多くの技術者が集る。

 またベンダー実施では、IBMの人気が高い。ユーザー側から見ればLPI認定が望ましいのだが、出入りSIerにはIBM認定を取得した企業が多く、このSIerの推薦もIBM人気を煽っているようだ。普及阻害要因としてアプリケーション問題が小さくなったのは、ユーザーがLinuxをミッションクリティカル分野でLinux採用を始めたからだと、ITアナリストのジョン・エクゾール氏は分析する。

 同氏は「当分野にはERP、CRMなどでLinux版が有力ベンダーから提供され始めている。もともとウェブシステムのフロントエッジ分野でLinux採用が始まったので、バックエンドのLinuxアプリケーションが出揃ってきたことは、Linux普及の強い追い風だ」と説明する。しかし最近では、.NETリリースに向かってマイクロソフトのチャンネルへのウィンドウズ締め付けが強まっているのも事実だ。これについてエクゾール氏は、「独禁法裁判もマイクロソフト有利に結着したので、マイクロソフトの呪縛から逃れらないSIerも多い。これがLinux普及が遅れる最大の要因になるだろう」と語る。

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