WORLD TREND WATCH

<WORLD TREND WATCH>第152回 IT業界、一斉にオートノミックへ

2003/04/28 20:29

週刊BCN 2003年04月28日vol.988掲載

 世界IT業界は、複雑化したシステムの管理コスト上昇を抑制するシステム自身の管理機能を強化するオートノミック(自律型)コンピュータ開発に向かって一斉に動き始めた。このなかでもIBMの「Autonomic」、サンの「N1」、NECの「Valumo」などが先行している。

マイクロソフトも公表

 これら業界動向を見てマイクロソフトも自己回復力を追求する技術コンセプト「DSI(Dynamic System Initiative)」を発表した。米業界はマクロソフトもこの業界潮流へ大急ぎで飛び乗ったと観測する。マイクロソフトはDSI技術によって、既存ITインフラをより有効に利用できるオートノミックアプリケーション開発をユーザーやサードパーティ開発会社に勧誘する方針だ。米業界はマイクロソフトDSIはIBMのオートノミック機能「自己回復力」や「自己管理機能」に真正面から対抗する技術だと把えている。

 これに対しマイクロソフト・サーバー・グループのボブ・オブライエン・マネジャーは次のように解説する。「IBMなどのアプローチは、システムを外部から観察して、欠陥発生を認識しそれを治療する考え方だ。これに対しわが社のDSIは、既設IT環境と自動的に協調して稼動するアプリケーションを事前開発するという、より予防薬に近い考え方である。従って、DSIはIBMなどの機能と発想原点が異なる」

 フォレスターリサーチのアナリスト、ヨーク・ライアン氏は、「マイクロソフトDSIは、デルなどの要請を受けて開発に着手したと考えられる。IBMなどとの差別化ポイントは、ほとんどの技術情報がマイクロソフトから開示されないので分析できない」と語る。マイクロソフトDSIの詳細は開示されていないのだ。マイクロソフトDSIでは、「SMD(System Definition Model)」が中核概念である。SMDでデータセンターのポリシーに合わせてシステムを運用するための情報を一元的に管理する。データセンター側は事前にDSIに従った運用ポリシーに関する情報をアプリケーション開発者に提供する。

 またSDM機能をもつOS環境では、データ量の増加による負荷分散やIT資源再配分を、システム自身が動的に対応できるようになって、システム管理コスト上昇を抑制する。これに関しマイクロソフトのオブライエン氏は次のように補足する。「DSIはITインフラのライフサイクルにわたって、開発、システム構築そして運用に関するすべての約束事を事前設定する狙いをもつ」

 マイクロソフトはDSIをウィンドウズサーバー2003をはじめ、同社エンタープライズ対象全製品に搭載する。IBMのオートノミック担当、アラン・ガネック副社長はDSIについて次のように対抗意識を露にする。「わが社のオートノミック技術はマルチプラットフォーム環境ITすべての複雑性を解消する総合技術だ。マイクロソフトDSIはいつもながら、ウィンドウズだけを対象としたもので、市場への影響力はIBMと比べものにならない」(中野英嗣●文)

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