進化するJ2EE その真髄とは

<進化するJ2EE その真髄とは>4.オープン・スタンダード

2003/04/28 16:18

週刊BCN 2003年04月28日vol.988掲載

 J2EEは、ライセンス料金が存在することを除けば、オープン・スタンダード(誰でも知ることのできる標準規格)である。仕様書を誰でも入手でき、学ぶことができるし、対応したプログラムを作成することができる(売るのには制限がある)。なぜオープン・スタンダードがもてはやされるのか。(日本アイ・ビー・エム ソフトウェア事業部 WebSphere営業企画推進 テクノロジー・エバンジェリスト 米持 幸寿)

 筆者がIBMに勤め始めたころ、オープンという言葉は流行っていなかった。IBMソフトウェアの仕様やソースコードはマイクロフィルムに焼かれており、筆者が担当していたプログラム・サービス担当者(PSR)か、開発元に近い部門の人間しかアクセスする権限はなかった。当然のことながら外部の人間は見ることができなかった。

 開発拠点は米国をはじめ、英国、ドイツ、カナダといった具合に世界中に散らばっていた。それらの開発部門同士では当然のことながら仕様などの情報を交換し合う。OSの仕様、ミドルウェアの仕様を詳細に知らなければ良い製品を作ることはできない。

 仕様やソースコードに価値を見い出していたころは、ソフトウェアを作り、提供する人間が限られていた時代の話である。しかし今は違う。今日、世界中には当時の何百倍ものソフトウェア技術者が存在し、多くのプログラムを提供するようになった。単一企業内にすべての開発拠点があり、隠蔽することで価値を上げていた時代は終わっている。IT業界全体が1つのIT企業のように仕様やソースコードをある範囲で自由に閲覧できるようにする必要があるのだ。

 OSの仕様を自社で隠蔽することは、自社製品の価値を上げることに役立つだろう。しかし、ソフトウェアベンダーがいなくなればOS自身の命が危険にさらされることになる。それをIBMは身をもって知った。そのようなことはOSにとって好ましいことではないし、独占的な製品提供をすることになり、好ましくない。

 そこで、アプリケーションを「だれでも同じ土俵で作れるようにする」方式としてオープン・スタンダードがある。ソフトウェアにとってのオープン・スタンダードは、ソフトウェアとの接点の部分にある。

 今日、もっとも多く作られるアプリケーションはウェブアプリケーションであり、接点はミドルウェアだ。かくして、ミドルウェアの仕様であるJ2EEがオープンな仕様として公開されている。

 J2EE仕様がオープンであることにより、世界中のベンダーが共通に使うことのできるミドルウェアを提供することができ、世界中のソフトウェアベンダーやエンジニアが、共通に使うことのできるフレームワークやアプリケーションパッケージを作り、ビジネスを行うことができる。

 オープン・スタンダードとは、1社独占のための仕様ではなく、健全な競争社会を形成し、大きく安定感のあるIT業界を作るための重要な基礎になっていると言っていいだろう。
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