進化するJ2EE その真髄とは

<進化するJ2EE その真髄とは>5.J2EEを作ってきた人たち

2003/05/12 16:18

週刊BCN 2003年05月12日vol.989掲載

 ミドルウェアやOSは、誰が作ったかでコンセプトが大きく変わるものだ。J2EEを作った人はどんな人たちだったか。(日本アイ・ビー・エム ソフトウェア事業部 WebSphere営業企画推進 テクノロジー・エバンジェリスト 米持 幸寿)

 J2EEの特徴的な技術は、サーブレット、JSP、EJBとネーミングサービス、JMSと機能を強化してきた。これらはすべて個人のパソコンやクライアント(企業アプリケーションの端末機器)で実行されるものではなく、すべての機能がサーバー実行されることを前提に作られている。これは「JavaがGUI(グラフィカルユーザーインターフェイス)に向いてなかった」ことも理由としては挙げられるかもしれないが、とにかくこれらの仕様を考案し、完成させるにおいて「サーバー・アプリケーション」を作ってきた現場の声を反映してきたのは間違いない。

 サーバー・アプリケーションとは、多くの場合「配布しない中央実行のアプリケーション」を指す。ウェブアプリケーションはその代表的なものだが、旧来の端末型ホスト・アプリケーション、クライアント・サーバー方式のサーバー側のプログラムや、ウェブサービスなどもサーバー・アプリケーションである。

 こういった形態のアプリケーションは、常に重要な局面で使われてきた。金融システム、生産管理、証券取引などだ。近年では、オリンピック公式サイトのような大規模ウェブサーバーなども含まれるだろう。残念ながら個人のプログラマーが使ったり、部門サーバーの管理者が個人的に決めて使ったりすることは少なかった。そういった用途には必要以上に機能が豊富であり、そのために難しく、コストもかかるからである。

 こういった背景もあり、ベンダーからユーザーへのJ2EEシステムの提供形態は、旧来からの大型システムの流れの中で行われてきた。

 こうした現場で活躍してきたエンジニアは、昔からミッション・クリティカルなシステムを構築してきた経験をもっている。タイトなトランザクション管理、超大規模なデータベース処理、超大規模なユーザーからのアクセス。これらに対応しながら、J2EEにもそれらを解決する機能を実装してきたのである。

 こういった現場では、見栄えのよいものや操作が簡素なものより、組み合わせかたや調整方法が自由で質実剛健なものが好んで使われる。

 こうして、ミッション・クリティカル・システムを構築するための製品の機能やアイデアは、J2EEに受け継がれてきたのである。安価な製品が登場して部門サーバーなどにも利用できるようになってきたのは最近のことである。

 情報システムは人が作るものだ。そのシステムには作る人の経験や姿勢が反映される。J2EEは、企業システムのプロ集団が作った共通仕様であり、企業を強固にする機能や構造が最初から満載されている。企業システムにしかインストールできなかった高信頼性のシステムが手軽に手に入る時代になったのである。
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