モデル事例にみる IT投資減税活用ガイド

<モデル事例にみる IT投資減税活用ガイド>第7回 リース契約によるIT減税の考え方

2003/05/26 16:18

週刊BCN 2003年05月26日vol.991掲載

 今回のIT投資減税の特徴に、資本金3億円以下の企業の場合には、買い取り契約だけではなく、リース契約での「投資」も適用になることがある。以前はソフトがリースの対象にならなかった時もあったが、最近ではソフトのみでもリース契約が可能になっている。リース減税対象資産は、ハードとソフトで期間4年以上かつ耐用年数を超えない契約で、年間支払額合計がハード200万円、ソフト100万円以上となっている。(日本パーソナルコンピュータソフトウェア協会(JPSA) 税務委員会委員長 税理士 根岸邦彦(監修))

今回と、次回との2回に分けて、ある卸売業者が営業体制を刷新するために「情報の共有化」を可能にするシステムを導入した事例をもとに、リースの場合と買い取りの場合ではどう違ってくるのか、本税制の考え方を比較検討する。

 今回はリースの場合で、ソフト合計額1480万円をリースした場合に焦点を当てて、説明する。ハードはパソコンとサーバー、周辺機器。ソフトはパッケージソフトと独自仕様ソフト、追加開発ソフトである。

 まず、月額リース費用がいくらになるかを計算する。リース期間を5年、ソフトの残価を5%の74万円、想定金利を年8%とすると、月額リース料(PMT)は、約29万円となる。リース資産と月額リース料の比率を「リース料率」といい、この場合は1.96%となる。

 リースの支払総額は約1740万円となる。もとのソフト合計金額1480万円は、支払総額の約85%に相当する。IT減税ではリースの場合、支払総額の60%を対象金額とすることになっており、このケースの想定金利8%より高い金利を税法では想定していることになる。実際、60%の場合の想定利回りは、5年リースでは23%にもおよぶ。

 リースの場合の減税効果は、リース費用の税効果金額の正味現在価値と、減税を適用したときの合計を計算して評価する。税効果の計算には、会社が負担する税金の割合「総合税率」を想定しなければならない。税金は法人の所得に課せられるものとして、「法人税+地方税+事業税」となる。所得の金額に応じて税率が変化し、事業税は翌年度の損金とされるので、実際には複雑な問題であるが、ここでは40%で計算する。

 毎年の税効果額を初年度の複利現在価値に逆算し、これを合計したものが「正味現在価値」である。ここで割引率を2%に設定したとすると、正味現在価値(NPV)は、656万1574円となる。つまり、支払総額1740万円の40%である約696万円より、約40万円ほど正味現在価値は低い計算になる。

 次は減税の価値である。申告の年である2年目に発生するので、これを前提に計算する。

 減税対象額は支払額の60%であるから約1044万円となり、この10%が税額控除の金額であるので、ここから2%割り引く。「17,401,140円×0.6×0.1÷1.02」で、102万3597円となる。よって、リースの税効果は、「6,561,574円+1,023,597円」で、758万5171円である。

 最後は、これを購入して減価償却と税額控除を受けた場合とで比較するのだが、単純な税効果の額はリースの方が大きい。しかし、だからといってリース契約が有利かというと、そうではない。リースの場合は、「金利をリース会社に払う」というマイナス要素があるので、このキャッシュフローも加えて判断しなければならない。

 次回はこの部分に焦点を当て、買い取りの場合と比較し、解説していく。
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