e-Japan最前線

<e-Japan最前線>46.e-Japan戦略II

2003/06/02 16:18

週刊BCN 2003年06月02日vol.992掲載

 「2005年までに世界最先端のIT国家となる」――01年1月に大きな目標を掲げてスタートしたe-Japan戦略の見直し作業が行われてきたが、さらなるIT利活用に向けた第2段階の新しいIT戦略が固まってきた。まず「e-Japan戦略II」の原案がまとまり、現在パブリックコメントの募集が6月12日まで行われており、7月初旬には正式決定する。6月中旬には、電子政府の構築に向けた「電子政府構築計画」、7月初旬にはe-Japan戦略IIを受けて具体的な施策を取りまとめた「e-Japan重点計画2003」のそれぞれ原案がまとまり、いずれもパブリックコメントの募集が行われる予定だ。

基本理念は「ITの利活用

 今回はまず、e-Japan戦略II(以下、戦略II)の内容を整理しておこう。全体の構成は、大きく4章に分かれている。最初に戦略IIがめざす目標を描いた「基本理念」。次に、国民にとって身近で重要な7つの分野における先導的な取組みを示した「先導的な取り組みによるIT利活用の推進」(表)。第3章は、セキュリティや人材育成など5分野で構成される、高度なIT利活用時代を支えるための「新たなIT社会基盤の整備」。最後に第2章、第3章で掲げられた方策を政府が取るべき方策と民間に呼びかける行動に整理した「方策一覧表」である。

 「IT利活用により『元気・安心・感動・便利』社会をめざす」――。「基本理念」でまず打ち出したのが「ITの利活用」。これによって「構造改革」を進めるとともに、新しい産業や市場を創出するための「新価値創造」を実現して、景気低迷が長引く日本を「元気にしよう!」という狙いである。しかし、いろいろと利害関係が複雑な社会で、IT化したからといって構造改革や新価値創造がすぐに実現できるわけではない。そこでIT化のメリットが大きいと期待できる国民に身近な7分野を選び、重点的に施策を展開していくとともに、7分野以外にもその波及効果を広げていこうというのが「先導的取り組み」の狙いであり、作戦だ。

 先導的取り組みで興味深いのは、大手企業に比べるとIT化が遅れているといわれる中小・零細事業者を考慮した施策が目立つ点である。とくに「中小企業金融」が取り上げられたことの意義は非常に大きい。「医」の個人病院、「食」の農林漁業経営者や食品流通業者、「就労・労働」での起業・事業化の支援など、日本経済を元気にするには、中小・零細企業を元気にすることが不可欠だ。IT化による業務効率化やネットワーク化によるビジネスチャンス拡大は、大手よりむしろ中小・零細に大きな恩恵をもたらすことが期待できる。

 「IT基盤整備」では、いつでもどこでも何にでもつながるユビキタスネットワークの形成をめざして引き続き基盤整備を進めていくとともに、安心してインターネットを利活用できる環境を構築していくことを掲げている。今後、各種オンライン行政サービスや電子商取引、電子決済などのサービスが本格化し、誰もが利用するようになれば、これまで想定されていないような事故や問題が発生する可能性もある。そうした場合の対応や救済策も準備する必要があるだろう。最後の「方策一覧表」には、政府が取るべき方策に加えて、企業や国民も世界最先端のIT国家の実現に向けて積極的に行動を起こすよう呼びかける「民間に呼びかける行動」が明記された。官民が互いに協力しながらIT国家の実現をめざそうというわけだ。各種ITサービスも実際に利用することで問題点も明らかになり、より良いサービスを実現することが可能となる。ITを利活用する主役は、政府ではなく、国民1人ひとりである。(ジャーナリスト 千葉利宏)
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