WORLD TREND WATCH

<WORLD TREND WATCH>第158回 競争激しい64ビットプロセッサ

2003/06/23 16:04

週刊BCN 2003年06月23日vol.995掲載

特徴異なるインテルとAMD

 AMDが64ビットCPU「Opteron(オプテロン)」を発売したことで、インテルとAMDの64ビット競合が始まった。64ビットでインテルのアイタニウムは先行したものの、2002年デビュー以来評価は低く、当チップ搭載モデルの販売も不振だ。このためアイタニウムは有力ベンダーの支援を得られず、03年5月にIBMがアイタニウム新版「Madison(マディソン)」採用サーバーを発表するまで、米国ではヒューレット・パッカード(HP)だけが製品化していたにすぎない。

 アイタニウムは同社32ビットIA-32とは異なるアーキテクチャで、32ビットアプリケーション実行への対応が不十分で、処理も遅かった。このためインテルは次期マディソンから「IA-32Execution Layer(IA-32EL)」を搭載すると発表。IA-32ELはアイタニウム上で32ビットアプリケーションをXeon(ジーオン) XP(1.5GHz)」並みの速度で処理するソフトウェアレイヤーである。

 マーキュリリサーチのアナリスト、ディーン・マッキャロン氏は、「32ビットを十分な速度で処理できることを望むなら、アイタニウムではなくジーオンを買うべきだ。アイタニウムの32ビットコードのパフォーマンスは32ビットプロセッサとは勝負できないからだ」という。これに対しAMDのオプテロンは32と64ビット双方のアプリケーションを高速処理できるよう設計された。

 AMD広報は、「オプテロンはユーザーがアプリケーションをすべて64ビットへ移行するまでの間にも、32ビットアプリケーションの高速処理が維持できるように設計されている」と説明する。これに対しインテル広報のバーバラ・グリムス女史は、「アイタニウムは業界初の64ビットプロセッサとして、64ビットアプリケーションを高速処理できるよう設計された。従って32ビットアプリケーション処理をアイタニウム上で高速処理できるようには考えられていない」と語る。米ITアナリスト、ナサン・ブルックウッド氏は、「両チップの特徴は異なる」と次のように分析する。

 「オプテロンは32ビット業界リーダーの処理速度を維持しながら適当な64ビットパフォーマンスを発揮するよう設計されている。これに対しアイタニウムは32ビットとしては適当な処理を維持しながら、64ビットでは業界リーダーを目指している。従って同じ64ビットであっても、両プロセッサの特徴は異なり、それだけユーザーの選択肢が広がってIT業界にとってはよいことだ」IBMもアイタニウム次期版マディソンの性能については確信をもったようだ。このためIBMは同チップ搭載で同社EXA(エンタープライズX-アーキテクチャ)に準拠した高性能インテル64ビットサーバー発売を発表した。当サーバーのIBM主力OSはウィンドウズではなくLinuxで、IBMは同一ハードのLinuxで、HPのウィンドウズサーバー打倒を社内で宣言した。(中野英嗣)
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