e-Japan最前線

<e-Japan最前線>50.光ファイバー民間開放

2003/06/30 16:18

週刊BCN 2003年06月30日vol.996掲載

 国土交通省は、前年度に引き続き河川・道路管理用光ファイバーの民間開放を実施する。今月から順次、地方整備局での説明会をスタート。今年度は、2割増の約1万2000kmを対象に、9月に利用希望者の募集を行う計画だ。

9月に利用希望者募集

 国土交通省は、前年度に引き続き河川・道路管理用光ファイバーの民間開放を実施する。今月から順次、地方整備局での説明会をスタート。今年度は、2割増の約1万2000kmを対象に、9月に利用希望者の募集を行う計画だ。当初は民間側からの強い要望で実施されることになった光ファイバーの民間開放だが、実際に制度がスタートする段階では、NTTや電力各社が管理する光ファイバーの開放が進み、注目度も少々冷めてしまった面もある。それでも初年度は約1万kmの光ファイバーを開放して約1700kmの申し込みがあった。

 「初年度だったことを考えれば、決して少なかったとは言えないでしょう」(中込淳・総合政策局事業総括調整官室調整官)。確かに国有財産である光ファイバーを民間が利用するための制約条件がいろいろとある中で、開放区間の約2割弱の申し込みがあったわけで、まずまずの滑り出しと言えそうである。申し込み状況を地域別に見ると、関東地方整備局の管轄が400kmで最も多く、次いで北海道開発局の300km、北陸、四国、沖縄が200kmと続く。東北地方整備局の管轄だけは申し込みはゼロだったが、全体的にみると、北海道、沖縄、四国など地方での申し込みが相対的に多かった。

 また、初年度に申し込んだ民間事業者は、長距離通信事業者から地元のケーブルテレビ局までさまざま。申し込み区間も、長い区間で借りる事業者もあれば、短い区間の場合もあるなどばらばらだったという。「開放区間は10km単位で設定したが、『10kmでは短すぎて手続きは繁雑だ』という業者もいれば、『10kmでは長すぎて、もっと短くしてほしい』といった要望もあった」(中込調整官)。もともとは河川・道路の管理用に敷設した光ファイバーだが、いろいろな用途に使える可能性を示したと言えるだろう。

 一方で、課題も浮上してきた。今年度の事業をスタートした6月中旬の時点で、昨年度申し込み分の接続が1件も完了しなかったことだ。開放通知が民間事業者に届いた後に実際に民間事業者がネットワークのルーティングを行うが、電柱添架やNTTとの接続が困難といった各種障害が生じており、これも実際の接続工事が遅れている原因にもなっているようである。「国土交通省側でNTTなど他の民間事業者の光ファイバーを接続しておいてほしい」との声も聞こえてくるが、「制度上の問題で早期に解決するのは難しい」(中込調整官)。

 民間事業者側の光ファイバーを敷設各種調整制度がスタートする時点で民間事業者を取材した時も、国の光ファイバーを利用した場合の納期を懸念する声が聞かれていたが、民間利用では注文から納入までのスピードが重要となることから各種手続きについても更なるスピードアップが必要と考えられる。「できるだけ早期に初年度分の工事も終え、その段階で民間事業者からの要望も聞き、制度の見直しも検討したい。もう少し、自由度のある制度にすることも考えたい」(中込調整官)。

 国土交通省でも、初年度の事業が終わった段階で、民間事業者からのヒアリングを実施。さらに今年9月の第2回受付の申し込み状況も踏まえて、現行制度の見直し議論を進めたい考えだ。先月、NTTの光ファイバー開放義務の問題がクローズアップされた。将来的にもし、NTTの開放義務が緩和されることになれば、国や地方自治体が管理する光ファイバー網の民間利用が活発化する可能性もあるだろう。それだけに民間事業者に使い勝手の良い制度を確立することは、利用者の選択肢を広げるという観点からも重要と考えられる。(ジャーナリスト 千葉利宏)

  • 1