WORLD TREND WATCH

<WORLD TREND WATCH>第160回 デスクトップLinuxに期待

2003/07/07 16:04

週刊BCN 2003年07月07日vol.997掲載

 オラクルのラリー・エリソン会長の反マイクロソフトマインドはきわめて強い。エリソン会長が2003年春より再三、デスクトップLinuxに肩入れする次のような発言を繰り返えすようになった。「デスクトップLinuxはいまだデスクトップのマイクロソフトオルタナティブ(代替)にはなっていない。しかし、間もなくその時代が来るだろう。例えばサンのスターオフィスとオープンソースのブラウザのMozillaはインテルデスクトップのマイクロソフト独占を崩す可能性を秘めている。Linuxオフィス・プロダクティビティ・アプリケーションの機能強化が進めば、間違いなくマイクロソフトOSとオフィスの活性化したオルタナティブソリューションとなる。そうなれば、とくにエンタープライズITソリューションコスト全体を底上げしているマイクロソフト地獄から全ユーザーを救うことになる」

肩入れするエリソン会長

 米国でもデスクトップLinuxを導入する動きは徐々に強くなっている。そして導入事例は全て数万台のクライアントを擁するエンタープライズだけである。このクライアントコストについてもエリソン会長は次のように解説する。「マイクロソフトのクライアントソリューションのコストはボリュームディスカウントでも800ドル(9万6000円)は覚悟しなければならない。クライアントを5万台以上保有する企業は全世界で数万社ある。5万台のクライアントではデスクトップのソフトだけで4000万ドル(48億円)となり、エンタープライズIT予算としては無視できない。このクライアントコスト削減は世界エンタープライズ共通の課題だ」

 オラクル広報は、「800万ドルにはOS、オフィスそしてサーバーやエクスチェンジ、SQLのアクセスライセンス料を含めた当社の実例だ」と補足する。エリソン会長の肩入れはあるものの、まだ多くの米エンタープライズで本気でウィンドウズをLinuxにリプレースする計画をもつところは少い。しかし、最近開かれるデスクトップLinuxに関する米国セミナーはどこも満員で盛況なのも事実だ。多くのエンタープライズIT部門はサーバーではLinuxを導入し始めており、このためLinuxへの反発アレルギーはほとんど見られない。

 一方、不況によるIT予算削減で、デスクトップの巨額ライセンス料はIT部門の頭痛のタネだ。とくにエンタープライズではサーバー・ベースド・コンピューティングへのシフトが完了しており、クライアントに重装備は不要だとの認識も強くなっている。従って現行オフィスとの操作が大きく変わらず、メールなどの日常業務がウィンドウズ以外でもこなせる確認がとれれば、マイクロソフトに固執する必要はないと発言するCIOも多くなっている。CIOの立場からすれば、ウェブサービスへの移行も急がれる。しかし、予算が限られる現在、巨額のデスクトップコストは頭から離れない。この情況を十分認識したエリソンの会長の発言のようだ。
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