情報モラルとセキュリティ

<情報モラルとセキュリティ>13.セキュリティで情報の価値を認識

2003/07/07 16:18

週刊BCN 2003年07月07日vol.997掲載

 前回は、セキュリティ技術を組み合わせてユーザー企業に情報管理サービスを提供することが、ひいては導入企業の社員の情報モラルと企業の信用力を向上させることを、トリニティーセキュリティーシステムズ(トリニティー)を例に紹介した。(コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS) 専務理事 久保田裕)

 トリニティーでは、様々なセキュリティニーズに対応するため、創業の契機になったCDのコピー防止技術のほかに、インターネットを専用線化して情報を伝達する技術や、ホームページの改ざん防止技術、写真や動画、ドキュメントやプログラムなどを暗号化した上で使い回しをできなくするDRM(デジタル著作権管理)技術などを開発している。

 ウェブ上の写真やプログラムはもとより、企業内で管理されているドキュメントなどデジタル著作物は、言うまでもなくコピーが簡単で第三者に配布してもオリジナルが手元に残る。

 アナログ世界でも、ブックオフのように、本に書かれた内容すなわち情報そのものに価値を認めず、単に経済効率性だけを追っただけのビジネスがまかり通る中にあって、デジタル著作物の技術的な保護は重要である。これは、単にコピーや不正使用の防止といった自衛手段としてではなく、情報モラルの観点からも必要なことだ。

 画像データやプログラムのダウンロード販売などでは、その保護対策を施していなければ、ダウンロードしたファイルを第三者にメールなどで転送することは簡単である。この結果、著作権法違反や個人情報保護法違反等となる場合、同時にダウンロードされたデータやプログラムは、正規ユーザー以外に使い回される危険性が常につきまとう。こうした懸念を避けるために、セキュリティは重要である。

 しかし、最も重要なことは、ダウンロードしたユーザーに対し、「この情報には価値がある」とのメッセージを伝えることにある。

 トリニティーの技術を使い、有償で動画コンテンツを配信している企業では、「ダウンロードしているユーザーは欲しいコンテンツであればお金を払っている」として売り上げも伸びていると、トリニティーの林元徳社長は言う。

 コンテンツや情報の価値を認めてもらい、それに応じた正規の料金をいただくという健全なビジネスのために、情報モラルの観点からセキュリティ技術を位置づけるべきなのである。
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