“一技の長”を探る システム構築ビジネス争奪戦

<“一技の長”を探る>12.TKC(上)

2003/07/07 20:43

週刊BCN 2003年07月07日vol.997掲載

 TKC(飯塚真玄社長)は、地方公共団体向けのASP(アプリケーションサービスの期間貸し)サービスを本格的に始める。

自治体のASP活用を促す

 ASPは、今年10月、栃木県に総額約34億円を投資して完成する新しいインターネットデータセンター(IDC)を活用する。

 IDCは土地約4億円(約6600平方メートル)、建物約20億円、内部設備約10億円で、二重化した高速通信網や耐震構造、3日以上の連続発電が可能な自家発電装置など「業界最高水準の堅牢性」(角一幸・専務取締役地方公共団体事業部長)になるという。

 これだけの投資をした要因の1つに、自治体などが、積極的にASPを採用する動きがある。「最高水準のIDCがないと、今後の自治体ビジネスは続けられない。何十億円かかっても、完成させなければならない」と話す。

 総務省では総合行政ネットワーク(LGWAN)を利用した市町村向けASPサービス「LGWAN-ASP」の準備を進めており、これを受けて、自治体のASP採用が高まる可能性がある。TKCなど民間業者のLGWANへの接続が認められれば、市町村に向けたASPサービスが、格段に提供しやすくなる。

 LGWAN-ASPとは別に、TKCでは独自のASPサービスの準備をすでに始めている。昨年5月にサービスを始めた「課税状況等の調べ」では、27団体と契約を結んでおり、200団体から申し込みを受けているという。

 この「課税状況等の調べ」は、年に1回しか使う機会がないにもかかわらず、各自治体は専用のアプリケーションソフトやハードウェアを購入していた。こうした使用頻度が極端に低い業務アプリケーションは、「ASPに適している」(角専務)という。自治体向けに本格的なASPサービスを始めたのは、「全国で初めてではないか」と話す。

 今年6月からは、一部自治体に向けた「施設予約システム」のASP版を始めており、今年10月から本格的なサービスを始める。一方、静岡県蒲原町向けには、東海地震などからデータを守るため、通信回線を使ってデータベースの情報をTKCのIDCに送信・保存する実証実験を昨年12月から始めた。今年10月にTKCの新しいIDCが完成したタイミングで実用化する。

 角専務は、「当社のIDCを活用したASPサービスの売り込みに力を入れる」と話す。(安藤章司)
  • 1