情報モラルとセキュリティ

<情報モラルとセキュリティ>16(最終回).情報モラル普及活動へご支援を

2003/07/28 16:18

週刊BCN 2003年07月28日vol.1000掲載

 イージーシステムズジャパンは、CD・DVDライティングソフトで有名なソフトメーカーである。特に「Drag'n Drop CD+DVD」は、それまでの常識を覆す操作性で、パソコンバンドル市場を席巻した。そのイージーシステムズが次に狙い定めているのが、セキュリティシステムである。(コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS) 専務理事 久保田裕)

 昨年から、「ezFile Security」、「ezMail Security」などの製品を次々に発表している。「ezFile Security」を使うと、誤って文書を送信した場合でも、送信済文書を破棄することができる。受け取った文書の印刷や保存、再配布を禁じる設定も可能だ。文書を安全に送付したうえで、相手がその文書を開けたかどうか確認することもできる。この技術を使って顧客への報告を郵送からメールに切り替えた金融機関もある。

 一方、イージーシステムズが開発したデジタルコンテンツの販売システムが、ソフトバンクBBが運営するダウンロードサイトなどで既に稼働している。これは、ダウンロードしたソフトなどをセットアップすると、例えば2週間のお試し期間なら無料で使用でき、期間を過ぎるとライセンスキーを購入して、正規ユーザーになるというシステムである。もちろん雑誌の付録CDで配布しても構わない。「超流通」を現実にする仕組みである。前回報告した調査で明らかになったファイル交換ソフトは、現在は、ほとんどが違法行為に使われていると言わざるを得ないが、セキュリティ技術を組み合わせれば、P2Pシステムは、超流通の格好の媒体となり得る。そうなれば、P2Pは、デジタル時代の基幹技術と言われるようになるかもしれない。

 16回にわたった連載は今回で終わる。営業秘密や顧客名簿などの情報漏洩、著作権侵害など、企業が抱えるリスクは多いが、本連載ではこうしたリスクの回避策として、管理を厳しくする方法ではなく、情報モラルの向上を考えてみよう、と主張してきた。情報モラル向上のためにセキュリティ技術を利用する。情報モラルはこの場合、情報感度と言い換えてもいい。今回紹介したイージーシステムズをはじめ各社のセキュリティ技術は、情報を生み出した人が配布条件を決めることができ、情報に対する感度は確実に高まるはずだ。情報感度が上がれば、リスク回避ばかりでなく、玉石混淆の情報から玉だけを見つける力を養うことにもなる。こうした前向きな効果を期待して、読者の皆さんには、ぜひ情報モラルとセキュリティについて考えて欲しい。
  • 1