「今年は電子政府・電子自治体『元年』を迎える」――。片山虎之助総務大臣の基調講演を最初に、日本経済新聞主催の第3回電子政府戦略会議がこのほど都内で開催された。会議にはBCNのインタビューにも登場していただいた梶原拓・岐阜県知事、木村良樹・和歌山県知事をはじめ、10人近い地方自治体の首長が参加。電子自治体に向けた基本的な考え方や取り組みを披露した。IT化によって「元気・安心・感動・便利」社会が実現できるかどうかは、まさに首長のリーダーシップにかかっている。(ジャーナリスト 千葉利宏)

自治体から積極的提言

 会議での発言を整理すると、大きく3つの視点に分けることができるだろう。第1に産業育成、雇用拡大などの地域活性化、第2に行政サービス、第3に民主主義に基づいた自治体経営――という視点だ。「電子自治体を進めていくうえで、それぞれの地域に情報システムやコンテンツを作る、“情報工房”と言える拠点が必要だ」――。ITによる地域活性化に積極的に取り組んでいるのが、岐阜県の梶原知事である。岡山市の萩原誠司市長も、「IT化を推進する出口として、地域の雇用がなくてはならない」と強調した。岐阜県のIT拠点「ソフトピア・ジャパン」、和歌山県の遊休保養施設を活用したIT企業誘致、岡山市の電気工事業者を結んだ人材・資材調達ネットワーク、市川市(千葉県)の空き室マンションを活用したホテル事業などの取り組みが紹介された。

 「NPO(非営利団体)やボランティアとも協力していくことが大切」(福田昭夫・栃木県知事)といった発言も目立った。栃木県では近くNPO支援センターを立ち上げる計画だ。市川市でも、昨年5月にオープンして好評を得ている情報拠点「情報プラザ」の運営をNPOに委託。IT教育や高齢者・障害者のサポートなどの分野で、NPOやボランティアなどを活用している事例も多く、「新たな雇用を生む可能性がある」(萩原岡山市長)との期待が表明された。電子自治体で大きく変わるのは「行政サービス」だ。キーワードとなるのが、「生活者起点」と「BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)」。

 静岡県の石川嘉延知事は「重要なのは、県民サービスの向上と、行政の生産性の向上」と明快に言い切る。静岡県では、県職員1人当りの県民負担率アップという指標を掲げて組織のスリム化を図るとともに、それぞれの業務ごとに、目的、達成目標、必要な経費や手段などを書き込んだ「業務棚卸表」を作成。これによって、業務の統合化などを推進している事例を紹介した。「民間のビジネスモデルに対する新たな公共モデルを作ることが大事」(梶原岐阜県知事)、「従来の(紙の)やり方をそのままIT化するというケースも多いように思う。このままでは電子自治体も失敗してしまうのではないか。佐賀県ではそうならないように取り組みたい」(古川康・佐賀県知事)との決意表明も飛び出した。

 選挙で選ばれた自治体トップにとって、自治体経営に住民の声をどう反映させるかは、最も重要な課題だ。「電子町内会などITを使って民主主義を高度化したい」(萩原岡山市長)という発言に代表されるように、ITは自治体経営の戦略ツールになりつつある。「ITで歳出の無駄をできるだけ削減したうえで、国民負担率がどうあるべきか。シミュレーションをして住民に問う必要がある」(福田栃木県知事)。「予算編成もIT化しつつある」(石川静岡県知事)。ITを業務の効率化に使うだけでなく、自治体経営のマネジメントツールとして活用しようというわけだ。さらに、シミュレーションなどの結果を幅広く情報公開し、住民からパブリックコメントを募集するためのツールもITである。「本人確認がキチンとできるネットワークは、“情報民主主義”の基盤となる」(梶原岐阜県知事)――。今月25日に本格稼動する住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)による本人確認機能に対してe-デモクラシーの観点からも重要との認識が示された。