WORLD TREND WATCH

<WORLD TREND WATCH>第167回 Linux圧倒の基軸

2003/09/01 16:04

週刊BCN 2003年09月01日vol.1004掲載

 2003年7月下旬、マイクロソフトのビル・ゲイツ会長はアナリスト会議で、同社は今後も研究開発費(R&D)を継続的に増やし、04年には03年比6%増の68億ドル(8160億円)を投じると発表した。IBMとマイクロソフトはともに世界IT業界では突出したR&D投入企業として知られる。IBMのR&Dは48億ドル(02年12月期)で、マイクロソフトは従業員ストックオプション経費を算入すると、R&Dは64億ドル(03年6月期)でIBMを大きく上回る。

巨額のR&D投入で対抗

 同社はストックオプションを廃止し、03年9月から従業員に株式を付与する新制度を導入する。したがって同社R&Dはストックオプション経費算入で計算すべきだろう。ゲイツ会長はこの巨額R&Dを、Linux対抗の基軸となる「オフィス2003」と次期ウィンドウズプラットフォーム「ロングホーン」の「インテグレーションイノベーション」に向けると説明した。ゲイツ会長は「ロングホーンはウィンドウズクライアントの1バージョンではない」と強調し、次のように説明した。

 「ロングホーンはオフィスとサーバー関連商品の基幹フレームワークで、マイクロソフトの今後のソフトはすべて、ロングホーンをベースにシンクロナイズする」オフィス2003ベースのインテグレーションには「オフィス・ライブ・ミーティング2003(旧プレースウェア)」、「オフィス・ライブ・コミュニケーション・サーバー2003(旧オフィス・リアルタイム・コミュニケーション・サーバー)」などコミュニケーション技術が含まれる。

 これに関しゲイツ会長は、「これらインテグレーションはいずれもLinuxベンダーが挑戦できないビジネスバリューを誕生させ、これでウィンドウズはLinuxを圧倒する」と語り、あくまで同社R&DはLinux引き離しに重点的に投入させることを強調した。さらにゲイツ会長はXMLベースのウェブサービスでも独走する姿勢を明確に打ち出す。ゲイツ会長は、「XMLとのインテグレーションを当社がサポートすることで、オフィス2003ユーザーは企業のバックエンドシステム、特にデータベースとビジネスプロセスと直結できるようになる」と説明する。

 マイクロソフトは同社スティーブ・バルマーCEOの方針から、同社ソフトはすべて世界1億社といわれるSMB(中堅小企業)向けに仕立てられる。同社が新たに参入したソリューション市場でも、SMB向けCRMなどを発売している。このため同社は今年10月、「04年以降のチャネルパートナー新戦略」を発表すると同時に、SMB向け「ウィンドウズスモールビジスネサーバー2003」も発売する予定だ。

 同社はこのサーバーを中核に、全世界のSMBをクライアントからバックエンドのミッションクリティカルアプリケーションまですべてをウィンドウズで取り囲むという野心を抱く。同社の巨額R&Dは、「LinuxをSMBから駆逐し、世界SMBで同社の野心を実現するためだ」と、米ウォールストリートは観測する。(中野英嗣●文)

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