“一技の長”を探る システム構築ビジネス争奪戦

<“一技の長”を探る>19.ヨーズマー

2003/09/01 20:43

週刊BCN 2003年09月01日vol.1004掲載

 北陸のITベンチャー企業、ヨーズマー(野口高志社長)が急伸している。自治体などからの受注を足がかりに、今年度(2004年3月期)の売上高は前年度比約7割増の3億円を見込む。

トランスコーディング技術で業績伸ばす

 同社は、(1)地域密着、(2)トランスコーディング技術――の2つの強みをもつ。トランスコーディング技術とは、多媒体同時生成システムとも呼ばれており、1つのデータベースから複数の媒体にコンテンツを生成する技術を指す。

 具体的には、自治体や新聞社、商店街、住民など、地域の生活に関わるあらゆる情報(コンテンツ)を単一のデータベースに集積する。このコンテンツを、パソコンや携帯電話、ケーブルテレビ、街頭の大型ディスプレイ、キオスク端末など、それぞれの表示装置に合う形式へと自動生成して配信する。

 同社の主力商材は、トランスコーディング技術を使った情報システムの構築。ユビキタス社会を目指す自治体からの引き合いが多く、富山県福光町では、同技術を採用し、先進的なユニバーサルアクセス環境(あらゆる端末からタイムリーに情報を手に入れる仕組み)を実現した。

 同社は99年に福井県で起業したのち、わずか4年で北陸三県および新潟県柏崎市に拠点を開設。年内には長野県に5か所目の拠点を開設する。社員数は30人弱。顧客の側に密着する営業戦略を展開する。

 野口社長は、「当社はウェブ系のシステム開発が中心だが、社員には、必ず顧客に寄り添い、顧客の話を真剣に聞いてきてからでないと、開発道具であるパソコンに触らせない。各拠点に顧客が来た時には、プログラマーもデザイナーも全員起立して『いらっしゃいませ』と挨拶する」と、顧客密着を徹底させている。

 売上構成比は公共団体が65%、民間が35%で、自治体向けなどの売り上げが中心となる。毎年高い成長を続ける同社にとって、急成長による資金難を避けるため「公共重視」を続けている。

 同社がこれまで手がけたユニバーサルアクセス網は、利用者が数万人規模が中心だったが、今は数百万人規模のアクセス網構築の商談も進める。また、今後も拠点数を増やし、全国展開を進める。「全国展開は、得意のトランスコーディング技術を主軸に進める。当面の課題は、人材教育とソフトウェアの開発体制の整備。規模が大きいシステムを納期までにきちんと組み上げる体制づくりを急ぐ」と意気込む。(安藤章司)
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