中国ソフト産業のいま

<中国ソフト産業のいま>35.日系企業のCRM需要高まる

2003/09/15 20:43

週刊BCN 2003年09月15日vol.1006掲載

 今号からは、日本のソフト会社が中国でどのように事業を展開し、どのような課題を抱えているかを見ていきたい。日本のソフト会社にとって中国は重要な開発、販売の拠点となっている。中国事業の力量は、その企業全体の力量を示す指標の1つにもなる。最初に、NECの中国現地法人、日電系統集成(中国)有限公司(NECSI)を取り上げる。(坂口正憲)

 1996年に設立されたNECSIは450人の社員を擁し、トヨタ自動車の現地法人向けの販売管理システムを開発するなど、日系企業向けシステムインテグレーション事業ではトップの実績を持つ。

 そのNECSIが今後、力を入れていくのがCRM(顧客情報管理)分野である。大内山正夫・SI事業部統括部長は、「急成長する中国の消費市場で熾烈な競争を演じている日系企業は、CRM導入が避けられなくなっている」と指摘する。NECSIは9月初旬、沖電気工業、コールセンターのアウトソーサーである太公網(中国企業)と共同で、日系企業向けセミナーを北京と上海で開催。2日間で50社以上の参加企業を集めた。技術者の半数以上が日本語堪能というNECSIのシステムインテグレーションパワーと、日本国内で高いシェアを持つ沖電気のコールセンター向けシステム。さらに、中国19都市でサービスを提供できる太公網のネットワークを利用したCRMを日系企業に提案した。

 日系企業では今、コールセンターを中心としたCRMシステムの需要が高まっている。中国で“CRM”と言うと、意外に聞こえるかもしれないが、思いの外に進んでいる。例えば、家電最大手のハイアールは、青島の本社で中国全土の顧客情報を一元管理し、大規模なコールセンターを自前で運営する。また、多くの銀行が自動音声応答システムを導入し、外国為替など各種サービスを24時間提供している。今後、日系企業が消費市場としての中国で生き残っていくには、CRMシステムは不可欠なITインフラとなる。沖電気、太公網という強力なハード、サービスのパートナーを得たNECSIは、こうした日系企業の潜在ニーズを開拓していく考えなのだ。
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