WORLD TREND WATCH

<WORLD TREND WATCH>第179回 携帯電話を狙うLinux

2003/11/24 16:04

週刊BCN 2003年11月24日vol.1016掲載

 LinuxがサーバーOSシェア奪取の余勢を駆って、年間4億台以上出荷される巨大携帯電話市場を狙い始めた。2003年7月に松下電器産業、日立製作所、NEC、ソニー、フィリップス、サムスン、シャープ、東芝など世界有力家電メーカーが「CE(コンシューマエレクトロニクス)Linuxフォーラム」を結成した。これ以降、携帯電話機メーカーのLinuxへの注目が急速に高まり始めた。Linux組み込みカーネル開発のモンタビスタも携帯電話Linuxグループ入りを表明した。

市場席巻には高いハードル

 ガートナーのアナリスト、ケン・デュラニ氏は、「携帯電話OSを狙うLinux最大の長所は、さまざまなネットワークタイプとの統合機能が強力であることと、テレコム会社が自由にソースにアクセスできることだ」と解説する。またモンタビスタは、Linuxの特長に関し、「Linuxはトラフィックを低下させることなく複雑な回線径路を選択する機能も優れている。メガバイト以下の小メモリで、C、C++、JavaやXMLレイヤーを加えられたOpenwaveなどが自由に使えることもその強みだ」という。

 モトローラのワイヤレス・モバイル・グループのカイル・ハーパーGMは、「Linux利用はイニシャルコストも少額で、関連ライセンス料が最も安い。これから携帯電話の主力市場がアジアへ移ることを考えると、ローコストがOS選択の重要条件になる」と分析する。携帯電話、PDA(携帯情報端末)分野には多くの強力OSがひしめく。ノキアなどが主導するシンビアンのEPOC、日本メーカーが採用するトロン、パームソース、これにマイクロソフトもPockePC-Phone、Smart Phoneを準備し、これにLinuxが加わるというOS激戦区となる。

 このためLinuxが直ちに携帯電話を席巻するということは起きず、高いハードルをクリアしなければならないと、ガートナーのデュラニ氏も語る。さらに同氏は「Linux最大の課題は、これが単一の存在でなく、多くのベンダーがいろいろバリエーションを開発していることだ。さらにLinuxが大量の携帯電話に使われるためには、有力なモバイルテレコムやベンダーのお墨付きが必要となる。この認定が行われるかどうかが、Linuxが当市場で認知されるための必要条件となる」と解説する。

 既にシンビアンのEPOC新版はノキアによって認定されている。ノキアはEPOCを広めるため当OSのバイナリ互換、スクリーンサイズや解像度、その他主要キーハード仕様を設定し、多くの開発会社に公開し、当OS搭載出荷は03年だけで1000万台を越えると発表した。またこれから携帯電話が企業ネットワークに本格的に組み入れられることを考えると、当市場で強いマイクロソフトも携帯電話Linuxの強敵になる。パソコンサチュレーションを実感している同社は、ワイヤレスモバイル機器市場を重視しているからだ。

 一方のITの雄、IBMもパームやモトローラと次世代携帯電話開発の研究開発を強化し始めている。(中野英嗣●文)

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