中国ソフト産業のいま

<中国ソフト産業のいま>46.契約法は主体的に活用する

2003/12/01 20:43

週刊BCN 2003年12月01日vol.1017掲載

 1980年代の第1次中国進出ブーム、90年代の第2次ブームの際、日本企業は製造業を中心に相次ぎ進出し、中国の国内法や契約問題で辛酸を舐めた経験がある。そのため、「中国企業は契約履行の意識がない」、「法解釈が恣意的」などのイメージがある。ただ、中国も90年代後半から外資を呼び込むために国内法を整備している。99年には、それまであった複数の契約法を統合し、新たに「中華人民共和国契約法」を発布している。(坂口正憲)

 その中では、ソフト開発をアウトソーシングする際に必要となる業務委託契約も定義されている。その他、技術コンサルティング契約、技術譲渡契約などの分類も網羅されている。

 しかし、気をつけなければならないのは、日本と中国では契約法の意味合いが違う点である。日本では、発注書1枚、あるいは口頭での取り交わしでも、法当局は双方の間で契約が成立していると認める場合が多い。あらゆる商業活動は法律を前提に実施されていると見なす。一方の中国では、契約法とは主体的に活用するものであって、あらかじめ活用する意志を法当局に明示する必要がある。

 つまり、発注書や口頭の取り交わしをもって、後から契約成立を訴えても認められない。双方で明文化された契約書を取り交わし、当局から許認可を受けた後、登記しなければならない。これが欧米の契約主義と中国のそれとの大きく違う点である。詳細については、「中国契約法」のガイドブックが多く刊行されているので、そちらを参照して頂きたいが、有り体に言えば、面倒なことは間違いない。

 ただ、正式に契約を取り交わすのは、リスク回避のためである。発注側がリスクの大きさに見合って行動すればよい。小規模な開発案件であれば、契約書の取り交わしだけで十分なはず。最終的に代金支払いという決定権を握っている方が優位なのだから(権利の乱用は問題だが)、リスクはそれほど大きくない。それよりも、信頼できるビジネスパートナーを見つけることが一番重要なことは言うまでもない。日本国内のように、口頭でも“信頼”が成り立てば、それに越したことはないのだから。
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