WORLD TREND WATCH

<WORLD TREND WATCH>第181回 ノベル、独SuSE買収

2003/12/08 16:04

週刊BCN 2003年12月08日vol.1018掲載

 米ノベルがLinuxディストリビュータの独SuSE(スーゼ)を2億1000万ドル(231億円)で買収することを決定した。SuSEは売上高4000万ドル(44億円)程度のISV(独立系ソリューションプロバイダ)である。また、この買収ではIBMがノベルに5000万ドル(55億円)を出資することも決定した。これまで勢いをつけるLinux市場で、レッドハットは独走するディストリビュータだった。この買収によって、年商約10億ドル(1100億円)の新生ノベルという巨大Linuxディストリビュータが誕生し、レッドハットとの2巨頭体制となる。

マイクロソフトへの脅威論強まる

 ノベルは全世界で整備された販売チャネルをもつので、ウィンドウズ、UNIXからの離反システムインテグレータが増えている現状を考えると、レッドハットの強敵になることも期待される。Linux開発者のリーナス・トーバルズ氏も期待を次のように語る。「急速に伸び続ける世界Linux市場にノベルが強力なブランドをもって参入したことで、Linuxでのレッドハット独占体制が崩れ、両社競合によりLinux普及はますます加速される。これまでもLinuxベースのシステムインテグレータからは、ディストリビューション市場に最低2社の力の拮抗する勢力がほしいとの声が強かった。この市場要求を十分承知していたIBMが、ノベルに勢いをつける投資を行ったことで、ユーザーもLinuxへの信頼感をさらに高めるだろう」

 これまでレッドハットとSuSEはIBM、ヒューレット・パッカード(HP)とエンタープライズLinux契約を締結している。しかし、レッドハットはとくに世界SMB(中堅・小企業)での販売チャネルが未整備で、SuSEも米国でのチャネル整備が遅々として進んでいなかった。両社ともにSMBチャネル開拓が喫緊である。このためSMBチャネルという観点では、ノベルがレッドハットを上回ることになる。米国著名ITアナリストであるロブ・エンダール氏は次のように解説する。「LAN普及初期、ノベルはLAN OSの王者だった。その後、マイクロソフトのOSがノベルの市場を侵食してから、ノベルは勢いを失う一方だった。しかし、ノベルがLinuxディストリビュータになったことで、再びノベルは上昇気流に乗るだろう。Linuxはまだ未開拓市場であるだけに、販売チャネル育成ノウハウをもつノベルは、レッドハットの強力なコンペティターになる」

 もちろん、何社かのシステムインテグレータからは「ノベルがLinuxを扱うことで、ノベルLinuxがNetWare Liteに成り下がってしまうのでは」という懸念も聞かれる。また、この買収はマイクロソフトにとっても脅威だとの声も、米国では強くなっている。あるマイクロソフトウォッチャーは次のように語る。「ノベルはレッドハットと違って、デスクトップLinuxのXimianやディレクトリをもつので、Linuxによるトータルソリューションが提供でき、この点からもマイクロソフトはノベルの動きを注ししている」(中野英嗣●文)

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