テイクオフe-Japan戦略II IT実感社会への道標

<テイクオフe-Japan戦略II>23.評価専門調査会

2004/01/12 16:18

週刊BCN 2004年01月12日vol.1022掲載

 民間の立場からe-Japan戦略IIに対する政府の取り組みを評価する評価専門調査会が、昨年12月22日に第1回会合を開催して本格的な活動を開始した。昨年7月にe-Japan戦略IIが策定されたあと、自民党総裁選挙、内閣改造、衆議院選挙など政治日程が続いたため、停滞していた印象もあった政府の取り組みも一気に活発化してきた。(ジャーナリスト 千葉利宏)

提言のとりまとめへ

 IT基本法が施行されてから今月で丸3年の見直し期限を迎えた。「e-Japan戦略IIを策定した昨年7月から1月までは、ある意味で端境期。IT基本法を含めて今後のIT政策の進め方を検討すべきタイミングだった」――。昨年8月に総務省から内閣官房IT担当室に着任した安藤英作参事官は、この半年間をそう位置づける。

 11月の衆議院選挙と第2次小泉内閣発足で政治日程に一区切りがつくと、e-Japan戦略IIの具体化に向けた動きも本格化。まず、石原邦夫東京海上火災保険社長、出井伸之ソニー会長などIT戦略本部の民間有識者による有識者会合が開催されたあと、約4か月ぶりに開催されたIT戦略本部21回会合で今後のIT政策の進め方について討議。有識者会合の論点も踏まえて、e-Japan戦略IIを具体化していくための「加速化パッケージ」を、2月メドに策定することになった。この作業と並行して評価専門調査会を立ち上げ、2004年6月ごろに策定予定のe-Japan重点計画-2004に審議内容を反映するために、3月までに提言をとりまとめるなどのスケジュールも固まった。

 IT基本法の見直しについては、年末に開催された2回のIT戦略会議などを通じて「今回は改正を行わない」(安藤参事官)との方向で決着。今後の焦点は、e-Japan戦略で掲げた「2005年に世界最先端のIT国家となることをめざす」との目標をどのように達成するかに移ってきたと言える。

 昨年11月に国連が発表した電子政府総合評価では日本は前回の26位から18位に順位を上げたが、“世界最先端”とは言い難い評価だ。12月に公表された世界経済フォーラム(WEF)のITランキングでも日本は20位から12位となったが、ベスト10入りは逃した。

 「国連の調査は約1年のタイムラグがあるが、今年3月までに政府関係の手続きはほぼオンライン化されるので、目標年の05年秋の時点では国際的な評価も高まると考えている」(安藤参事官)。ただ、外部評価と自己評価は往々にして食い違うこともあり、何をもって“世界最先端”と客観的に評価するかは難しい問題だ。

 評価専門調査会でも、行政手続きのオンライン化について「制度的に利用可能というのではなく、実際にどれだけ使われているかで評価すべき」といった意見も出されているという。そうした評価基準を含めて調査会での議論が始まっているが、調査会の評価と国連やWEFなどの外部評価とが大きく食い違っても問題なだけに、外部評価も意識して提言をまとめることになるとみられる。

 一方、政府の取り組みも“世界最先端”の実現を意識して施策の重点化を進めていく段階に入ってきた。昨年12月に公表された加速化パッケージ(素案)では重点施策としてA)アジア等IT分野の国際戦略、B)セキュリティ政策の強化、C)コンテンツ政策の推進、D)IT規制改革の推進、E)評価、F)電子政府・自治体の推進――の6項目を打ち出している。目標達成の2005年まで残された時間は少ない。今年はまさに正念場を迎えようとしている。

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