企業のIT調達モデルを変える デルの挑戦と死角

<企業のIT調達モデルを変える デルの挑戦と死角>4.企業のパソコン調達を変えるCFI(1)

2004/01/26 20:43

週刊BCN 2004年01月26日vol.1024掲載

 前号で指摘した通り、パソコンの導入・管理には、意外に多くの手間とコストがかかる。購買業務、ソフトのインストール、各種設定、エンドユーザーへの配布、故障時の対応――など、煩雑な工程が存在している。パソコン本体の価格そのものはTCO(システム総保有コスト)の20%程度だ。企業の情報システム担当者の多くが、「パソコン本体の価格は下がったが、それに付随する手間やコストは変わっていない」とする。企業も数百人規模になると、パソコンの導入・管理に専任者を1人以上充てなければならない。その人的コストは無視できない。(坂口正憲(ジャーナリスト))

 企業でデル製品の人気が高まっているのは、低価格性もあるが、管理コストの削減につながる面があるからだ。前号まで解説してきた「標準バンドルのオンサイト保守サービス」もその1つだが、それだけではない。あまり知られていないが、デルにはCFI(カスタム・ファクトリー・インテグレーション)と呼ばれる有償サービスがある。

 デルはCTO(コンフィグレーション・ツー・オーダー)として、ユーザーが要望する仕様でパソコンを個別に製造しているが、CFIはCTOをさらに進めた“顧客サービス”である。CFIを契約すると、デルがユーザーの要望するソフトのインストール、IPアドレスなどの各種設定を工場段階(中国の廈門)で実施し、配送してくれる。

 ユーザーは事前に社内で使うパソコンで標準となるソフトを記録したマスターディスクをデルに渡し、発注ごとに設定情報を知らせるだけで、煩雑なインストール・設定作業から解放される。

 ある企業の情報システム担当者は、「従来は配送されてきたパソコン1台1台にソフトをインストール、設定しなければならず、1台につき2時間以上かかっていたが、今ではそれもゼロ。業務が大幅に軽減された」と話す。CFIの料金は1台につき、2000-3000円程度と見られるが、それでもコストメリットを得る企業は多いようだ。他のパソコンベンダーも受注台数がある程度の量に達すれば、インストールや各種設定のサービスを提供する場合もあるが、デルはCFI契約企業に対しては1台の受注から対応している。デルのCFIは、企業のパソコン調達の在り方を変えつつある。
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