視点

デジタルワールドの出現

2004/02/23 16:41

週刊BCN 2004年02月23日vol.1028掲載

 1月にCES(コンシューマ・エレクトロニクス・ショー)を訪問し、いよいよIT、家電の区別がなくなり、デジタルワールドが統一されてきたとの印象を強くした。これまでデジタルといえばITの世界にとどまっていたが、今や家電との境目はなくなりつつある。そんな時代にあって、パソコンのように学習を必要とする製品は、コンシューマにとって面倒な商品と映りかねない。テレビや電話などは何の訓練も必要としない。プラグを電源に差せばすぐ使えるように、IT端末もデジタルのプラグにつなぐだけで使いこなせる手軽さが求められている。

 現在、IT端末として象徴的な製品は携帯電話だろう。“電話”と名前が付いているから電話だと思い込んでしまうが、実際に搭載されている機能はそれを超えている。画像撮影機能に着目すればデジタルカメラ、データ送受信機能に着目すれば情報端末であり、放送受信機能が搭載されればテレビにもなる。

 こうしたデジタル化の波が訪れると、オフィスのスタイルも変わってくる。会社自体がバーチャルな組織に移行し、企業としての看板は掲げているものの、実態はパーソナルオフィスの集合体になるだろう。

 1985年のマイクロソフトの台頭、95年のインターネットの爆発的普及と、10年ごとに変革の波が訪れている経緯からすれば、04-05年の市場は盛り上がりを見せるに違いない。アメリカ通信工業会(TIA)でも、04年の市場は伸びが見込まれると予測している。

 成長市場だけに、あらゆる業種の企業が参入してくるだろうが、もともと日本企業は軽薄短小、品質などの面で強みをもつだけに、力を発揮できる場面は多くなる。ただし、得意とする分野がテレビなのか何なのか、どの部分で強みを発揮するかの選択と集中が求められる。加えて、新しい流れに対応できるグローバルな人材育成に努める必要がある。

 また、世界共通の問題もある。現在のところ、EMC(電磁波障害)に対する考え方はパソコンと家電の世界では基準が異なるし、著作権問題でも、インターネットによるコンテンツデリバリと放送ではそれぞれに法律がある。さらに、コンテンツ課金・徴収の問題、各国で異なる電波の利用周波数帯をどうするのかの問題もある。これらの問題は技術的には解決できても、全体的な話し合いが今後必要となる。国や業界ベースでグローバルな視点に立ち議論していくテーマはまだ多い。
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