テイクオフe-Japan戦略II IT実感社会への道標

<テイクオフe-Japan戦略II>34.輸出入・港湾手続き

2004/03/29 16:18

週刊BCN 2004年03月29日vol.1033掲載

 輸出入・港湾手続きを簡素化、効率化するための業務見直し作業が財務省を中心に本格的に始まった。すでに昨年7月に通関情報処理システム(NACCS)と港湾EDIシステムなどを連携してシングルウィンドウ化を実現しているが、今後は「国際海運の簡易化に関する条約(FAL条約)」の批准に向けて取り組みを加速する。「輸出入・港湾手続きを業務改革のベストプラクティスモデルとするべき」(日本経済団体連合会)との経済界からの要望をどう具体化していくかが期待される。(ジャーナリスト 千葉利宏)

簡素化と効率化目指す

「1978年に稼働したNACCSは、業務系システムの先駆け。他省庁がシステム導入を進めるうえでNACCS特例法がモデルとなってきた」(池ノ上功・財務省関税局税関調査室長)。電算化を進める過程で、これまでも通関業務の見直しが行われ、他省庁のシステムとの連携も図られてきた。97年には、厚生労働省の輸入食品監視システムや農林水産省の検疫システムと連携。02年には、経済産業省の貿易管理オープンネットワークシステム(JETRAS)とも連携し、1つの端末から各システムに接続できるワンストップ化は早い段階で実現していた。

 さらにシングルウィンドウ化も、昨年7月に国土交通省の港湾EDIシステム、法務省の乗員上陸許可支援システムなどと連携することで実現。NACCSからでも、港湾EDIシステムからでも1回の入力作業で関係システムにデータを送信できるようになり、港湾EDIシステムの申請件数も増え始めている。しかし、昨年7月17日に策定された電子政府構築計画に対して日本経団連では、輸出入・港湾手続きのワンストップ化について業務改革を一層推進すべき、との意見を提出。今年2月6日に決定したe-Japan戦略II加速化パッケージにも、改めて輸出入・港湾手続きのワンストップ化の推進が盛り込まれ、2月10日のCIO連絡会議で決定した業務・システム最適化計画の策定対象21分野にも「輸出入・港湾・空港関係分野」が加えられた。さらに3月19日に閣議決定した規制改革・民間開放推進3か年計画の重点計画事項でも「既存手続の一部IT化、既存システムの相互接続にすぎない等の指摘もある」として、業務見直しは待ったなしの状況となりつつある。

 ここでポイントとなるのが、FAL条約だ。すでに約40年前の65年に制定され、現在94か国が締結。G8でも批准していないのは日本だけで、ハブ港を有するアジア諸国でも締結している状況にある。日本では、74年に(財)日本貿易関係手続簡易化協会が設立され、EDI国際標準への対応を進め、「諸外国をみても日本ほどワンストップ化が進んでいる国は少ない」(池ノ上室長)とネットワーク化には積極的に取り組んできた。しかし、FAL条約の標準規定に準拠していない項目が多いとも指摘され、これを先進国並みに引き下げることが求められている。

 さらに電子政府構築計画において、NAC CS、CIS( 通関情報総合判定システム)のほかに、03年3月に稼働したばかりのCuPES(税関手続申請システム)の計3システムがレガシー(旧式)システムと認定された。財務省では、外務省を中心に関連府省と連携して、03年度からFAL条約への早期批准措置に向けた検討を進めるとともに、04年度には、業務・システムの最適化の一環としてレガシーシステムの刷新可能性調査を実施。その後、05年度に業務・システム最適化計画を策定するスケジュールで作業を進めていく。 「経済界などの要望・意見を踏まえながら業務改革に取り組んでいく」(池ノ上室長)。業務改革による新しい行政手続モデルの構築として注目される。

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