WORLD TREND WATCH

<WORLD TREND WATCH>第198回 米SIer、OS選択に悩む

2004/04/12 16:04

週刊BCN 2004年04月12日vol.1035掲載

 2004年は多くの米国ウィンドウズサーバーがアップグレード期にあると米システムインテグレータ(SIer)は言う。マイクロソフトも全ウィンドウズサーバーの半分以上は、まだNTで走り続けていることを認める。多くのアップグレード期を迎える顧客を抱える米SIerは、マイクロソフトOSとLinuxの選択に悩み続けているようだ。一方クライアントでも、Linuxの波が静かに押し寄せており、米SIerの60%は既にクライアント版Linuxの実証実験を終わっているとの調査も公表されている。

Winサーバーアップグレード期

 米SIerがサーバーOS選択で検討する項目は多い。米CRN調査によると、項目で重視するのは、OSの安定性、技術サポート力、OS機能、コスト、セキュリティなどだ。多くのSIerが最も悩むのはセキュリティ面で、マイクロソフトの弱点が目立つからだ。これの全てが同社の責任ではなく、ほとんどのコードクラッカーやウイルス創作者がマイクロソフト攻撃に最も熱を込めるからだ。

 あるSIer幹部は、「Linuxユーザーも急激に膨れ上がっているので、Linux攻撃があってもよさそうだが、その動きはない。やはりマイクロソフト1社が業界のソフト利益を独占していることが、攻撃の理由だろう」と語る。CRN調査によると米SIerで既にウィンドウズ2003(Win03)へのアップグレードを開始しているのは、04年頭でわずか10%弱にとどまる。さらに今後1年以内の同OSへのアップグレードを開始する予定のSIerも50%程度だ。

 従って40%程の米SIerはLinuxへのマイグレーションも視野に入っているようだ。事実CRN調査によっても50%弱のSIerがLinuxも選択肢だと認めている。マイクロソフトも新OSではセキュリティ対策を強化しているが、クラッカーの攻撃ターゲットであり続けることに変りはない。これに対し、Linuxを選択したSIerが重視した同OSの利点は、OSの安定性とその後のTCO(所有総コスト)の低さだ。特にIT予算が従来のように膨らむことが期待できないユーザーでは、Linux導入イニシャルコストの低いことが1番の魅力である。

 特に米SMB(中堅・中小企業)では、CRM(顧客情報管理)やERP(統合基幹業務システム)など前向きな投資が必要となっており、ITインフラコストはできるだけ減らすことを願っている。この課題に対し、マイクロソフトは米国で「5年間のTCOで見ると、多くの面でウィンドウズがLinuxより10─20%も安い」ことを積極的に宣伝し、「TCOで考えるならばLinuxが安いというのは迷信だ」と強調している。

 さらにOS選択では、アプリケーション問題が重要であるのはいうまでもない。この点ではウィンドウズに軍配があがるのは当然だ。多くのLinux派SIerも、Linuxでは他のソフトと未整合の多くのアプリケーションがリリースされることは認めざるを得ない。「しかし、問題発生時点のLinuxコミュニティの素早い対応には驚く」とコミュニティ活動を高く評価し、これに頼れることを強調する。(中野英嗣●文)

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