企業のIT調達モデルを変える デルの挑戦と死角

<企業のIT調達モデルを変える デルの挑戦と死角>16.標準仕様はデルがつくる?

2004/04/19 20:43

週刊BCN 2004年04月19日vol.1036掲載

 創立後20年で米デルは売上高490億ドルの大企業となった。一度も企業買収を行わず、自らのビジネスモデルを貫くことだけで、この売上高を達成した。あと3年で目標とする600億ドル企業になれるかどうか。そのカギを握っているのは、やはりサーバー・ストレージ製品だろう。デルは2003年、サーバーの売上高で40%、ストレージで47%もの高い伸びを達成している。それでも全世界市場でのシェアはそれぞれ10%以下なので、まだ伸ばせる余地はあるだろう。(坂口正憲(ジャーナリスト))

 特に注目すべきはサーバー分野である。4月初旬、デルは米国で開催したアナリストカンファレンスで、ブレードサーバーの新戦略を発表している。口うるさいアナリストを前に発表した戦略ということは、それだけ市場性に自信があることを示す。その戦略とは、数四半期後に次世代ブレードサーバーを投入するというものだ。マイケル・デル会長兼CEOは、「われわれの製品が登場すれば、現行製品はもはや時代遅れ」と強気に言い放つ。

 ブレードサーバーは、ノートパソコンのように薄いサーバーを1つのきょう体に何枚も差し込んで利用する。場所を取らず、処理能力を拡張するのにも簡単にサーバーを追加できる。ただ、サーバー分野で将来の主軸と目されるブレードサーバーだが、今ひとつ需要が伸びない。製品仕様がベンダーによって異なり、互換性がないからだ。A社製のきょう体を採用したら、A社サーバーを使うしかない。競争原理が働かず、価格性能比は低い。

 そのためか、デルはこれまでブレードサーバーにそれほど力を入れていなかった。それが一転、PCI Expressバスなどの最新装備の次世代ブレードサーバーへ積極的に取り組んでいく。デルはここで大きな賭に出る。ブレードサーバーの業界標準仕様の確立を狙っている米IBM、米インテルに背を向け、独自仕様の道を選ぶと見られるからだ。パソコンの主な標準仕様を決めたのはIBMとインテルだ。その標準仕様に乗ることで成功してきたデルが、ブレードサーバーでは独自仕様にこだわる。それは2社の技術に頼らなくても事実上の標準仕様をつくれるという自信の表れなのか。この挑戦が吉と出るか、凶と出るか。
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