テイクオフe-Japan戦略II IT実感社会への道標

<テイクオフe-Japan戦略II>37.評価専門調査会中間報告(下)

2004/04/19 16:18

週刊BCN 2004年04月19日vol.1036掲載

 政府のe-Japan戦略を民間の立場で評価する評価専門調査会が3月末に公表した中間報告では、全体評価に加えて4つの重点項目について踏み込んだ調査を実施した。次回報告でも重点項目の評価を行う方針で、今回対象とした4項目のほかに、今年10月の「ITS(インテリジェント・トランスポート・システム)世界会議愛知・名古屋2004」の開催に向けて動きが活発化している「移動・交通」、ICタグ普及のカギを握っている「食のトレーサビリティ」、月内に政府の情報セキュリティ補佐官が任命されて体制強化が図られる「セキュリティ」などを候補としていく考えだ。(ジャーナリスト 千葉利宏)

4つの重点項目に踏み込む

●電子政府・電子自治体

申請・届出手続きがオンラインで可能になりつつあるが、「実際の活用が進んでいない」。電子認証サービスの普及が不十分であること、添付書類の別途郵送・保存が義務付けられていること、手続きそのものの簡素化や廃止・統合が十分に検討されていなことなどがネックとなっている。今後の取り組みとして、電子申請・届出の手数料を効率化で得られる中期的なコスト削減効果を反映させた金額に設定することを提案。電子申請・届出の標準化、共通化を進め、業務改革に踏み込んだ手続き自体の簡素化を促進することが不可欠。業務の効率化では、紙と電子データの併用を認めている現状に対して「将来的に書面の電子データへの一本化を行う」と明記。自治体向けに開発した汎用システムでの標準化と内部仕様の公開を推進するとともに、自治体の業務や組織のあり方を抜本的に見直し、行政組織の機能を再構築することが必要としている。

●ブロードバンド・ユビキタスネットワーク

高速・超高速ネットワークインフラの整備について、ボトルネック設備の開放などの競争政策を高く評価。通信事業者の投資意欲を削ぐとの指摘にも「当面は現行の施策を継続することが適当」との見解を示した。今後は、無線アクセスや携帯インターネットなど普及を踏まえて、「2005年までに利活用の推進やコンテンツサービスの充実等により、有線・無線を問わず、高速インターネットアクセスへ4000万加入、それに加えて超高速インターネットアクセス(30 Mbps以上)へ1000万加入を達成する」との目標を掲げることを提案した。

●教育・人材

IT人材の高度化では、プログラムを書くための技術とアーキテクチャを設計する技術とは別であるにも関わらず専門職種として確立している企業が少ない点を指摘。弁護士、医師、会計士、建築士など専門職でのIT利活用もそのメリットが明確に認識されておらず、建築士養成ではCAD教育が十分に行われていない。今後は、IT人材の育成ではスキル評価の浸透を図り、大学での情報教育を産業界の立場から評価・報告する仕組みを導入することを提案。専門職の国家試験や公務員試験にそれぞれの分野に必要なIT能力を取り入れることを求めた。

●医療

電子カルテを軸とした医療機関・部門連携に関してe-Japan戦略で掲げた成果目標と施策実施目標との方向性が一致していないと指摘し、施策の体系の再構成を提案。電子カルテの外部保存を地域データセンターなど医療機関以外に認める通達や、電子カルテの連携に向けた各種ガイドラインの整備に加えて、医療業務の標準化を進め、プロセスそのものを見直すよう政府としても促進することを提言した。レセプトの電子化も導入にインセンティブを与えて一気に推進することが必要としており、オンライン請求の開始に向けた準備や情報提供を早急に行うべきとしている。

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