拓け、中堅・中小企業市場 事例に見るSMB戦略

<拓け、中堅・中小企業市場 事例に見るSMB戦略>第5回 高分子試験装置製造・販売の東洋精機製作所編(1)

2004/05/03 16:18

週刊BCN 2004年05月03日vol.1038掲載

 3月で創業70周年を迎えたプラスチックなど高分子材料の試験装置などを製造・販売する東洋精機製作所は、1994年、菅藤好美前社長が富士通のセミナーで影響を受け、トップダウンでグループウェア「ノーツ」を導入。同社では初めて、市販のソフトウェアを使い始めた。この時、東洋精機がノーツの導入案件を依頼した先が富士通系ディーラーのミツイワ。30年前に東洋精機が富士通製オフコン「ファコム-V」をミツイワを通じて購入して以来の長い付き合いだ。ノーツの導入から10年余りが経った昨年1月、現在の三原観治社長が富士通システムソリューションズ(Fsol)のセミナーに参加する。

富士通のセミナーから始まった

 その頃、三原社長は日本アイ・ビー・エム(日本IBM)が流していたテレビコマーシャルに関心を持っていた。「酒屋の親父がウェブシステムで世界に酒を販売して儲ける」というストーリー。そのため、「Fsolのセミナーで紹介されたASP型のERP(統合基幹業務システム)『ウェブサーブ』に衝撃を受けたようだ」(東洋精機の林芳樹・システム管理室課長)と、セミナーから社に戻った三原社長から林課長は、すぐにウェブサーブの導入を検討するよう指示される。そして、林課長は富士通関連の製品とあって、再びミツイワにシステム構築を依頼する。

 技術畑を歩いてきた東洋精機の三原社長はFsolのセミナーを聞いて、ウェブサーブを利用して同社が販売する記録紙やランプなどの消耗品をEDI(電子データ交換)で受発注できないかと考えたという。この時、「手作業で入力してきたオフコンに蓄積された過去の受発注のデータをサーバーベースのシステムでも生かすこと」(東洋精機の林課長)と、レガシー(旧式)資産とウェブサーブを連動させるという注文をミツイワに出した。

 製造業向けシステム構築に強みをもつミツイワは、三原社長の注文をすべて取り入れ、ウェブサーブを東洋精機用にカスタマイズしたASP型のEDIを提案した。システム構築費はサーバーなどを含め約1400万円。ASP型システムのためFsolのインターネットデータセンター(IDC)利用料として月額47万円を払っている。システム構築は、Fsolが担当し、6か月を要した。「これだけ細かい注文にも関わらず、短期間で安く導入できた」と、東洋精機の林課長は満足している。

 これを境に東洋精機は、社内の各部署の課長で組織した「ウェブ委員会」を立ち上げ、「オフコンにあるデータと連動して、業務効率を図る新たなシステムの導入に向け、全社的な検討を始めた」(林課長)という。その一方で、東洋精機社内でシステムに関心を向ける社員が増え、富士通以外のシステムに興味が移り始める。ミツイワにとっては、ほぼ“独占状態”だった東洋精機のシステム構築案件が、富士通関連以外のシステムインテグレータに奪われ始める。(谷畑良胤)
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