拓け、中堅・中小企業市場 事例に見るSMB戦略

<拓け、中堅・中小企業市場 事例に見るSMB戦略>第6回 高分子試験装置製造・販売の東洋精機製作所編(2)

2004/05/17 16:18

週刊BCN 2004年05月17日vol.1039掲載

 30年前からオフコンを活用している高分子材料の試験装置メーカーである東洋精機製作所は昨年1月、「オフコン資産を有効活用する」(東洋精機の林芳樹・システム管理室課長)ことを条件に、富士通システムソリューションズ(Fsol)のASP型ERP(統合基幹業務システム)を利用した消耗品のEDI(電子データ交換)システムを導入した。東洋精機が販売する記録紙やランプなど2000種類以上の消耗品を、大手タイヤメーカーなど約60社にEDIを使って試験販売を開始した。これまで、消耗品の注文は電話とファクシミリで受けていたが、「記入ミスのトラブルや営業担当者が受注伝票を切る手間などがあった」(林課長)のがEDIシステム導入のきっかけとなった。

ファイリングシステムは大塚商会、日本IBMに

 このEDIシステムの構築費は、導入段階で約1400万円。これ以外にASP利用料が月額47万円かかるが、東洋精機では、紙帳票の廃止や受注担当者を3人削減できたことで、「2年半で初期投資を回収できる」(林課長)と試算し、電子化の成功を実感している。東洋精機は、試験機メーカーで国内第3位。昨年度(2004年3月期)の売上高は約39億円。従業員は約130人だが、このシステム導入でEDIによる販売先を増やすことで、「事務作業で削減できる人員を、要員が不足している部署に回せる」(林課長)と人員の再配置も可能となった。こうした効果をさらに広げるため、今後もオフコンからクライアント/サーバー(C/S)型システムの移行を徐々に進める方針だ。

 実は、東洋精機の動きを見た業界トップの島津製作所もEDIシステムを導入し、消耗品販売専用の子会社「島津GLCセンター」を設立した。東洋精機のEDIシステムが、競争が激化するこの業界に“新風”を吹き込んだ。書類関係を電子化してウェブ上で運用する有効性を実証した東洋精機は今年7月、環境管理・監査の国際標準規格である「ISO14001」関連の提出文書や同社試験機製品パンフレットなどをPDFで保管・運用するファイリングシステムを稼動させる。これは、社内の各部署の課長クラスで組織した「ウェブ委員会」の提案から生まれた。

 このファイリングシステムは、大塚商会と日本アイ・ビー・エム(日本IBM)の2社連合が、住友電工情報システム(SIS)のパッケージソフト「楽々ドキュメント」を導入して構成。富士ゼロックスや東海ソフトなど数社の競争を勝ち抜いて受注した。東洋精機にオフコンやEDIシステムを導入し、長年の付き合いがあった富士通系ディーラーであるミツイワは、当然、競合したがファイリングシステム用の富士通サーバーを入れるだけにとどまった。東洋精機関連のシステム構築で初めて“脇役”に回ることになる。東洋精機は今後、「当面、基幹系はオフコンで動かす。だが、オフコンのデータ資産を徐々にC/Sに移行する」(林課長)と、現在はEDIシステムと自動倉庫との連動を検討中だ。(谷畑良胤)
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