大遊泳時代

<大遊泳時代>第20回 音楽CDと小京都

2004/05/24 16:18

週刊BCN 2004年05月24日vol.1040掲載

松下電器産業

 東京の居酒屋でコースターにCDのお皿が使われており、昔ギター流しで、幅をきかせたという親父さんいわく、「秋葉に行くとタダで配ってますからね」とのこと。昭和50年代フィリプス社からCDが上陸した際、磁気テープ一筋にきたひも屋にとってショックだったことが懐かしい。LPレコード屋が自分の仕事がなくなることを恐れて、フィリプス社からのレターとサンプルを引出しにしまいこんだので、開発と参入が大きく遅れたことを後から知り、これまた驚いたが、明治初期、城下町に陸蒸気が来ることに反対したおがげで、城下町がそのまま小京都として残ったことを考えると、ビールの下のCDが小京都に見えてきた。

 一方、CDの出始めはクリスチャンディオールか、キャッシュディスペンサーか、いやコンパクトディスクというんだと説明して歩いたものだが、それがCD-G、CD-V、CD-ROM、CD-Rと大発展し、デジタル時代全盛を築いた。しかし、日本レコード協会によると、昨年のCD生産は10%ダウン、アメリカも同様に峠を越えたらしい。CDレンタルとセルの統合店が増加しているといっても、街のレコード屋全体の減少は寂しい。

 最近のCDの話題を拾ってみると、お菓子のおまけに8センチCDをつけて大当たり、郵政公社がCD、DVDの冊子小包を始める。CD再販の期間を半年に短縮、CDの逆輸入を著作権法改正で制限、海外向け音楽CDなど不正コピー海賊版対策として、各メーカー共通のCD認証マークをパッケージに添付、各国で商標登録と、元気づける話は多いが、やはりCD需要の盛衰は、ソフト面ではコンテンツのヒット不足であり、ハード面からはコスト高が響いている。そこへネット配信が有料合法で伸び始め、さらにDVDオーディオの成長が続く。ねえ!ワトソン君、「CD屋はどうなるかね?」。「かごかきがタクシーに、新幹線になったように、CDもいずれはDVDにネットになるのでは」と冷たい返事であった。
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