拓け、中堅・中小企業市場 事例に見るSMB戦略

<拓け、中堅・中小企業市場 事例に見るSMB戦略>第8回 OCRソフトベンダーのメディアドライブ編(1)

2004/05/31 20:43

週刊BCN 2004年05月31日vol.1041掲載

 中堅・中小企業のほとんどは専門の情報システム担当者が在籍していない。そのため、オフコンやメインフレーム(汎用機)の再構築などでは、システムインテグレータやディーラーに依頼するケースが多い。逆に、社内にシステム構築のノウハウを持つ担当者がいる中堅・中小企業の場合は事情が異なる。システムインテグレータなどにとって、こういう企業からは案件を取りにくいものだ。1991年11月に設立されたOCRソフトウェアのメディアドライブは、そんな“難攻不落”な企業の1社だ。

ITノウハウを持つ企業は〝難攻不落〟?

 メディアドライブは95年10月、今では企業人の定番アイテムになった「名刺管理OCRソフト」と呼ばれる製品を世に初めて出したことで知られる。最近では、名刺専用の小型スキャナを付けた「やさしく名刺ファイリング」が同社の“ドル箱”製品となっている。

 創立当初は顧客管理に市販ソフトを使用していた。だが96年に親会社のエヌジェーケー(NJK)から出向してきた担当者と共同で自前でハードウェアを調達して独自にSQLサーバーシステム上で動く社内業務用ソフトウェアを作成した。メディアドライブには98年、NJK出向者と、そのノウハウを吸収した担当者によるシステム担当の部署が置かれ、今ではほとんど他社の手を借りず、自社のシステムを自前で手直しできるまでになっている。

 ところが、メディアドライブは今年4月、NECが昨年7月から開始したIP電話のサーバー保守・運用を請け負う「IPセントレックサービス」を一部導入、初めて本格的にベンダーのソリューションを受け入れた。

 きっかけは、NTT出身の谷村外志男・取締役会長が、「面白いモノがある」と、NECが東京都品川駅前のビルに新設した同サービスのショールームに担当者を向かわせたことに始まる。その担当者の1人である青柳孝則・営業本部ITネット事業統括マネージャ兼ITネットグループリーダーは、「谷村会長は、営業担当者が社内で電話営業する姿を嫌い、外を闊歩しながら営業するスタイルを築くことを考えた」とその経緯を説明する。そこでNECの『ソフトフォン』に目をつけることになる。

 メディアドライブは、「名刺管理OCRソフト」が普及するにつれ、あふれる情報の管理を簡略化する必要に迫られ、顧客管理や販売管理のシステムをNJKと自社で作ってきた。また、00年には、新しいソフト開発のスピードを上げるため、OCR技術やパッケージ開発を担当する商品開発本部・新技術開発研究所(埼玉県熊谷市)と、岐阜大学などど先端技術を開発するソフトピア開発室(当時・岐阜県大垣市)をVPN(仮想私設網)でつなぎ、連絡を密に取るようにした。この頃から、青柳グループリーダーは、IPプロトコルの扱いに慣れ、この経験が後に、NECの同サービスをすんなり導入することにつながったようだ。(谷畑良胤)
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