WORLD TREND WATCH

<WORLD TREND WATCH>第205回 IBMメインフレーム復活宣言

2004/06/07 16:04

週刊BCN 2004年06月07日vol.1042掲載

 40年前の1964年4月、IBMは当時画期的な全方位型のワンマシンコンセプトのメインフレームシリーズ「システム/360」を発表し、以降世界の大企業はIBM主導のコンピュータ技術を利用してきた。しかし、パソコン、インテルサーバーやUNIX台頭により一時は「メインフレームはマンモスのように死滅」とまでいわれた。しかし、IBMは苦境に陥って異業種からルイス・ガースナーCEOを迎え入れた後も、かたくなにメインフレーム開発に多額の開発費を投じてきた。

ユーザーの再認識高まる

 40年前の1964年4月、IBMは当時画期的な全方位型のワンマシンコンセプトのメインフレームシリーズ「システム/360」を発表し、以降世界の大企業はIBM主導のコンピュータ技術を利用してきた。しかし、パソコン、インテルサーバーやUNIX台頭により一時は「メインフレームはマンモスのように死滅」とまでいわれた。しかし、IBMは苦境に陥って異業種からルイス・ガースナーCEOを迎え入れた後も、かたくなにメインフレーム開発に多額の開発費を投じてきた。

 04年4月、IBMは「S/360誕生40周年」を盛大に祝った。IT不況直撃でIBMも減収減益を続けたが、03年決算でIBMは10%の伸びを示し、いち早くIT不況を脱した。それとともにIBMの誇るメインフレーム「zシリーズ」が03年後半より大きく伸び始め、再び同社のハード事業の柱に復活しつつある。04年に入っても需要はさらに旺盛で、1-3月期IBMメインフレームMIPS(100万命令/秒)値出荷は、前年同期比2倍という驚異的伸びを見せた。

 IBMメインフレームは現在、巨大なLinuxサーバーの役目も果たし、数千台の中小型サーバーを1台のメインフレームにコンソリデーション(統合)する能力を備えた。IBMは究極のメインフレームと銘打って、超大型「z990」を発売しているが、この需要は大きい。このため、この廉価版「z890」も発表した。日本を含めて多くのメインフレームユーザーは、分散コンピューティングへ移行した。

 しかし、この移行は分散化によるIT資産増大と、管理要員と管理コストの増加を招いた。投資対効果(ROI)の追求やTCO(所有総コスト)削減ムードの高まりは皮肉にも、メインフレームの役割をユーザーに再認識させた。ネットビジネス環境で許されないシステムダウンに対するメインフレームの誇る堅牢性もユーザーは強い関心を示した。IDCのエンタープライズシステム・アナリスト、スティーブ・ジョセリン氏も次のようにいう。

 「過去10年、IBM競合各社は『メインフレーム絶滅』を謳って、この排除に努めた。しかし多くの顧客はメインフレームを手離すことがなかった。特に大規模メインフレームを使うユーザーには、これのオルタナティブ(代替)がなかった。顧客はメインフレーム投資を続けるだろう。そのコンソリデーション能力から見ても、十分顧客のROI評価に耐えるだけの性能を備えているからだ」

 サン・マイクロシステムズ、ヒューレット・パッカード(HP)はメインフレームを自社UNIXサーバーに代替するキャンペーンを実施しているが、この「レガシーマイグレーション」は大きな効果を上げていないと、フォレスターリサーチのトム・ポールマン氏もいう。サンなどは「自社サーバーへ移行すれば、パフォーマンスは65%アップ。コストも50-70%下げられる」と主張するが、その実証例が少ないとポールマン氏はいう。同氏は、「メインフレームにも弱点がある。そのうち最も大きいのは若いITスタッフがこれに携わることを望まないことだ」という。(中野英嗣●文)

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