大遊泳時代

<大遊泳時代>第23回 安全対応へ原点に戻って勉強

2004/06/14 16:18

週刊BCN 2004年06月14日vol.1043掲載

松下電器産業役員

 自動回転ドア、遊園地の回転遊具、エレベータでの事故が続き、各地で安全が見直されている。自動化・機械化による利便行き過ぎの批判、弱者配慮・安全意識の不足の指摘、使用管理基準の不備の反省などがわき起こっている。これら事故に共通していることは、私の経験では、第1に結果論から始まることである。「危ないと思っていた」、「ああしておけば良かった」。そうなら何故事前に言わなかったのか。あるビルを建てる時、何故こんな無駄な空間を、何故こんな所に贅沢なガラスを、ここに仕切りがなくては社員が転落しますよ――と思ったが、有名な先生のデザインだとの一言で何も言えず沈黙。おかげで超エネルギー浪費ビルができてしまった。

 第2は、オーナー、オペレーター、ゼネコン、機器メーカー、工事屋、システム屋の間の契約関係、仕事の分担のまずさである。一見上手くいってるようだが、一旦不備や遅延が発生すると、SE屋がむにゃむにゃ言ってる内に終わってしまうことが多い。人の噂も75時間である。第3が、事故が発生した時のお詫びとディスクローズの対応である。もちろん弁護士をつけるのが良いが、日本人の心に共通の自責の念や、人の命を尊ぶ心がなくては!そしてディスクローズも重箱の隅から、針の孔からではダメ。いずれ、ばれてしまうのだから。

 土地公害問題が起った時、その夕刻のTVと翌朝の新聞には参ったが、嵐が過ぎるとマスコミも役所も地元も、同じ仲間となって解決に動き出すからうれしい。文藝春秋6月号で失敗学会会長の畑村教授も心配されているが、安全過剰による危険不感症と失敗を学ばないことによる安全配慮不足が怖い。ねえ!ワトソン君、「テーマパークのジェットコースターを見ていたら危ないね!!」。彼いわく、「何を言ってますか、そんなことよりあなたのジェットコースターのような仕事振りがもっと危ないですよ!!」には参った。
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